【本研究成果のポイント】論文掲載
- 磁化の増減に応じてFe-Fe原子間距離が伸長/収縮することが、熱膨張ゼロのインバー効果の起源であることを解明。
- X線吸収分光法、X線回折および逆モンテカルロ法の融合によりFe原子とNi原子がランダムに配列する不規則合金の原子配置の可視化に成功。様々な不規則合金に適用でき、新規材料開発に繋がる合金構造の新たな決定法を確立。
概要
広島大学大学院先進理工系科学研究科物理学プログラム電子物性研究室の石松直樹 助教は、同大学院の岩崎駿、甲佐美宇(足球即时比分_365体育直播¥球探网元年度博士課程前期修了)、加藤盛也(博士課程後期2年)、中島伸夫 准教授、柿澤翔 助教、東京理科大学理工学部先端化学科の北村尚斗 准教授、高輝度光科学研究センターの河村直己 主幹研究員、水牧仁一朗 主幹研究員、京都大学白眉センターの野村龍一 特定准教授、足球即时比分_365体育直播¥球探网地球深部ダイナミクス研究センターの入舩徹男 教授?センター長らと共同で、Fe-Niインバー合金の「インバー効果」と呼ばれる熱膨張が生じずゼロとなるメカニズムが、原子レベルで構造を可視化するとFe-Fe原子間距離の伸び縮みであることを初めて明らかにしました。
熱膨張がゼロになる巨視的な原因はFe-Niインバー合金の大きな磁気体積効果です。磁気体積効果は磁化の自乗に比例して体積が膨張する現象です。この磁気体積効果を原子間距離の伸び縮みとしてミクロに可視化することは、鉄(Fe)とニッケル(Ni)のような原子番号が近い金属原子がランダムに配置する不規則合金ではこれまで困難でした。そこで我々は、この合金を広域X線吸収微細構造(EXAFS)により捉えた元素選択的な短距離構造(< 5 ?)とを大型放射光施設SPring-8 のBL39XUにおいて高圧下で測定し、それぞれを矛盾なく満たす合金構造を逆モンテカルロ法で導出しました。その結果、インバー合金中の原子間距離は一様でないこと、磁気体積効果がFe-Fe原子対の伸び縮みで発生することを見出しました。今回新たに確立した解析手法はFe-Ni合金に限らず、今後、様々な不規則合金の構造決定に応用できる技術です。
本研究の成果は、米国の物理学誌Physical Review Bのレター論文として2021年6月15日付でオンライン掲載されました。
<研究に関すること> 広島大学大学院先進理工系科学研究科 助教 石松直樹
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