熱帯から亜熱帯のサンゴ礁は、生産量と生物多様性が最も高い生態系の一つですが、近年、世界各地でサンゴ礁の大規模な白化がおこっています。2016年には沖縄県沿岸域でも1998年以来最大規模のサンゴ白化がおこり、環境省の調査によると、石西礁湖ではサンゴの平均白化率が約90%に達したことが報告されています。
大学院農学研究科の竹内一郎教授(附属環境先端技術センター長)は、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設の山城秀之教授との共同研究として、2016年より沖縄県瀬底島沿岸域のサンゴ礁のモニタリング調査を実施しています。2017年3月、瀬底島南岸沖にてドローンによる空撮調査中に、巨大なマイクロアトール型のハマサンゴPorites australiensisを発見しました。なお、ハマサンゴ属の群体は、浅海域では海水面近くで上への成長が止まり、ドーナツ状に成長します。このような群体は環礁(アトール)に例えてマイクロアトールと呼ばれています。
このハマサンゴ群体の最大直径は11.1 m、周縁33.7 mの大きさです。これまで太平洋中部や中国南部で確認されているマイクロアトール型ハマサンゴは最大約9 mであるため、マイクロアトール型ではこの群体が世界最大級と思われます。既報による年間の成長率と直径から500~2100歳と推定されています。
本研究成果は、10月3日にSpringerのCoral ReefsにOnline Firstとして掲載され (Takeuchi and Yamashiro 2017)、読売新聞、毎日新聞等でも報道されました。
瀬底島南岸域には、現在でも、このマイクロアトールの他にもテーブル状のミドリイシ属等からなる被度の高いサンゴ礁が残っています。なぜ、この海域では健全なサンゴ礁が残っているのか、先端技術等による総合的な調査を行い、サンゴ礁生態系の保全方法の検討に役立てる予定です。
発表論文
Takeuchi I, Yamashiro H (2017) Large Porites microatoll found by aerial survey at Sesoko Island, Okinawa, Japan. Coral Reefs? DOI 10.1007/s00338-017-1626-1
沖縄県瀬底島南岸の巨大なマイクロアトール型ハマサンゴ
〈大学院農学研究科〉