平成23年3月末退職の理工学研究科電子情報工学専攻 橘邦英教授から、足球即时比分_365体育直播¥球探网での思い出を寄せていただきました。
「坂の上の雲のまち」考
永年住んだ京都から松山の本学に赴任して早々、松山城や道後公園の桜に「坂の上の雲」を見るようなワクワクした感動を覚え、それ以来大好きになった当地での2年間の生活が瞬く間に過ぎようとしています。本学で私に与えられたミッションは、新設された「プラズマ?光科学研究推進室」の室長として、プラズマや光に関する研究を進めている若手研究者の支援と専攻横断的なプロジェクト研究の推進でした。それと共に、私のささやかな希望で現役の研究者として活動できる最低限のスペースを確保していただき、プレーイングマネージャーとしての研究生活を享受しました。特に、地場産業との連携テーマを模索することが楽しみでした。また、地の利を生かしての八十八箇所霊場の遍路を通して、四国ならではの風物に触れることもできました。
折しも、NHKで司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」がドラマ化され、一昨年から放映されています。期せずして、愛媛県知事と松山市長にニューリーダーが誕生し、地域活性化に向けて「坂の上の雲のまち」の構想を謳い上げています。また、本学でも学長と学術担当理事のリーダーシップの下に、FDからAD (Academic Development) へというキャッチフレーズで、センターレベルでの先端研究のみならず学部レベルでの基盤的な学術活動の活性化に向けた取り組みが始められようとしています。そのような流れの中で、大学や県や市がどのような目標や対象のイメージを「坂の上の雲」に描いているかは、まだ明らかには見えてきていません。小説の冒頭の「まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている」という一文を思い起こすと、国を地域や大学に置き換えて、夫々の開化への具体的な将来構想を掲げること、そのことがいま求められています。今後、夫々の組織の中での戦略的なブレーンストーミングを通して、雲の形が具体的に認識できるような構想が練られていくものと期待しているところです。
今世紀では、これまでの物質(ハードウエア)の文明から感性(ソフトウエア)の文明へ開化していくことが、より重要な視点であることには異論はないところでしょう。そこで、従来の産業構造での生産者と消費者という一方通行の関係を見直し、プロダクトとユーザーの間をシステムウエアやソフトウエアを通して包括的に捉える新しい産業経済社会や文化の醸成、並びにその基盤を支える新しい視野での学術の展開が望まれているのではないかと考えています。地域での特徴的な文明を開化させるには、その地域の歴史だけでなく、現在の産物や産業、人的資源、地理的資源を最大限に生かすことが有利であり、それらの特徴を抽出して組み合わせることによって研究テーマを具体化していくことが可能になると思われます。退職後に愛媛を離れることになっても、この地が「日本で最も住んでみたい魅力的な地域」に開化することへの期待をもって、本学や愛媛の今後の発展に関心を持ち続けたいと思っています。