平成28年11月26日(土)、27日(日)の2日間、プロテオサイエンスセンターで、サイエンス?リーダーズ?キャンプ「タンパク質研究の先端技術を活用した実践型次世代生命科学教育」の成果報告会を実施しました。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催する「サイエンス?リーダーズ?キャンプ」は、中学校、高等学校等の理数教育を担当する教員が、合宿形式で最先端の科学技術を体感し、才能ある生徒を伸ばすための効果的な指導方法を修得することにより、理数教育における指導力の向上を図るものです。また、参加者が将来、都道府県等の理数教育において、中核的な役割を担う教員となるための素養の育成を図るとともに、地域の枠を超えた教員間のネットワーク形成を支援することも目的としています。本学では、この合宿研修を24年度から5年間連続して実施しており、今年度が最終年度に当たるため、キャンプの成果を実証するための成果報告会を開催しました。
本学のキャンプの特徴は、生命体の分子素子であるタンパク質研究を機軸とし、「コムギ胚芽を利用した無細胞タンパク質合成実験」などを体験し、「遺伝情報の流れ」や「DNAとタンパク質の働き」を生徒に理解させるために必要となる「生命現象を分子レベルで理解する素養」を体得すること、および研究センターの見学や才能教育に関する講義などによって、学習レベルを超えた高度な課題研究なども実施できるようになることにあります。従って、キャンプ受講者は、勤務地において生命を理解するための授業を実践する一方で、より高度な課題研究や教材などを考案し、その情報を共有することも求められています。
報告会当日は、キャンプの受講生14人、JSTの担当者2人、特別講師として鳩貝太郎首都大学東京客員教授、松浦克美首都大学東京教授、県内の関連分野の高校教諭(えひめサイエンスリーダースキルアッププログラムの受講生他)および本学の関連教員等、合計約30人が参加し、キャンプでの学習内容を反映した授業、教材開発、課題研究などについて、具体的な指導内容や生徒の理解度に対する効果をポスターや口頭で発表しました。また、特別講師による「科学教育のあり方」や「理解を深めるための授業形態」も聴講しました。これらの発表や討論を踏まえたキャンプ実施の成果が、以下のように判断されるとともに、今後中等?高等教育における生命科学教育をさらに推進させるための方策が検討されました。
- キャンプの体験をもとに、実習を伴った授業を実施し、生徒の生命の基本原理に関する理解度を上昇させているため、理数教育における指導力が向上した。
- 教員研修等において実習を実施し、周囲の教員にキャンプでの学習成果を波及させているため、地域の理数教育において中核的な役割を担う教員としての素養が育成された。
- 課題研究の指導について相互に学び、生命科学の教育に関する情報を交換しているため、地域の枠を超えた教員間のネットワークを形成している。
最後にプロテオサイエンスセンターの澤崎達也教授から研究センターにおける研究、特に「創薬を目指したタンパク質研究」について学ぶと同時に、現在開催中の愛大ミュージアムの特別企画展「PROS展」も実際に見学することによって、本学における先端的タンパク質研究を体感しました。このような取り組みを通じて、本学の教育研究が次世代の人材育成に貢献できることが期待されます。