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大学院理工学研究科の佐藤久子教授らの論文が、「Nature Communications」の注目論文に選出されました【4月30日(火)公開】

平成25年4月30日(火)、大阪大学工学研究科の宮田幹二名誉教授、佐々木俊之氏(博士課程3年)らと、理工学研究科の佐藤久子教授、森本和也助教が共同で「Nature Communications」に発表した論文が、注目論文として選出されました。

 「Nature Communications」は、Nature関連誌の中でオンライン限定の学際的ジャーナルです。多様な生物科学、化学、物理科学のあらゆる領域を対象範囲とし、さまざまな専門分野における高品質な重要論文が掲載されており、既存のNature関連誌が扱っていない分野の論文も掲載されています。「Nature Communications」に掲載された論文の中から、反響の大きかった論文で日本から投稿された論文が、毎月注目論文として紹介されています。

 キラリティは、自然界における最も根本的な性質の一つであり、様々な分野で利用されています。例えば、人の体はキラルな分子であるたんぱく質からできているため、外部から取り込む分子のキラリティを認識して異なった応答を示します。これは、医薬品の開発において非常に重要な現象です。キラル分子の集合体によって、らせんなどの新たなキラル構造体(超分子キラリティ)が形成されることがあります。
 本研究では、キラルなアミンとアキラルなカルボン酸から成る数多くの有機塩結晶の単結晶X線構造解析や分光法を通して、結晶中の水素結合によるらせんの右巻きと左巻きの選択機構を解明し、その制御に成功しました。また本学では、本研究において、固体状態での振動円二色性分光法の測定に成功し、超分子キラリティの予測が可能となりました。すなわち、世界で初めて結晶学的手法および分光学的手法によって分子のキラリティとそのらせん構造の左右選択機構を解明し、らせんの左右制御を達成しました。
 このように、分子キラリティと超分子キラリティとの間を結ぶことができれば、生物界でよく見られる酵素などキラル超分子の形成機構を、分子レベルから解明する重要な指針となります。また、材料としては、キラル分子を選択的に合成可能な触媒の創成が期待されます。

※キラルとは、ギリシャ語で「手」の意味。右手と左手を同じ向きに重ね合わせようとしてもうまくいかないように、鏡像と重ね合わすことができない性質のこと。逆に、鏡像と重ね合わすことができる性質をアキラルという。

 なお、本研究成果は、平成25年4月30日(ロンドン時間)に英国Nature Publishing GroupのNature Communicationsのオンライン速報版で公開されました。

Linkage Control between Molecular and Supramolecular Chirality in 21-Helical Hydrogen-bonding Networks by Using Achiral Components
 Toshiyuki Sasaki, Ichiro Hisaki, Tetsuya Miyano, Norimitsu Tohnai
 Kazuya Morimoto, Hisako Sato, Seiji Tsuzuki and Mikiji Miyata*
Nature Communications DOI: 10.1038/ncomms2756 4, 1787, 1-7 (2013)

注目論文としてこちらに掲載されています。

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