平成25年8月1日(木)、教育学部2号館大講義室で、《科学イノベーション挑戦講座》特別講演「新元素113番発見の軌跡」を開催しました。
本事業は、科学技術振興機構次世代科学者育成プログラムメニューB採択事業であり、中学生を対象とした、次世代を担う科学者を養成するものです。
特別講演には、新たに世界中の理科と化学の教科書に載る「新元素113番」を合成した、理化学研究所仁科加速器研究センターの超重元素研究グループグループディレクターであり、九州大学大学院理学研究院(兼任)教授である森田浩介氏をお招きしました。
講演の始めに、森田氏から元素をまとめた周期表の説明があり、たった110個ちょっとの元素で宇宙を含むこの世界の全てが作られていること、新たな元素を人類の手で作り出してこの周期表に追加する研究をしているとの話がありました。
次に、新元素の作り方について「簡単に言うと、二つの元素を衝突させて、一つにまとめるというものです。」と説明があり、この衝突時の速度が問題であり、うまく衝突して原子同士が一つになったとしても、どの方向に飛んでいくかを予測する必要があるとのことでした。
森田氏は、この「原子を見つける」ための装置を独学で研究した結果、全く新しい検出器「GARIS」を設計し、自然界には存在しない原子番号113番元素を作り出すことに精魂を傾けてきました。そして、2004年、2005年に1個ずつ新元素を発見しましたが、認定されませんでした。その後、新元素は全くできず、何年もの間何の成果もない期間が続いたそうです。
しかし、ついに2012年8月18日、再度の発見に至りました。再発見に至るまでの10年間に、新元素を作り出すために何と100兆個もの原子を衝突させ、使われた電気代だけで3億円にもなったということでした。
この再発見から得られたデータによって、新元素113番の実在が証明され、現在は国際機関による認定を待っているところです。
これまでのさまざまな元素の発見は、すべて欧米およびロシアにおいてなされており、それ以外の国では1つの元素も認められていないことが紹介され、日本で合成された「新元素113番」が認められることは、日本だけでなくアジアにとっても大きな一歩を示すことになります。
また、幻の新元素「ニッポニウム」を発見した故小川正孝氏は、愛媛県の松山中学(現在の愛媛県立松山東高等学校)の出身者であることや、森田氏が今回新元素を発見する上で重要な役割を果たした検出器「GARIS」を製造しているのは、新居浜市にある「住友重機械工業株式会社」であることなど、愛媛県と新元素の深い縁についても紹介がありました。
参加者の中には中学生に交じり小学生もいましたが、森田教授の話に真剣に聴き入っていました。講演後には質疑応答の時間もあり、各参加者は熱心に質問をしていました。
森田氏の研究はこれで終わったわけではなく、現在も「新元素119番」の合成を試みています。「もし、この元素が合成できれば科学の世界は大きく変わる」とまで言われている「新元素119番」の合成の成功と、今後のご活躍をお祈り申し上げます。
<教育学部>