平成25年11月10日(日), 科学技術振興機構主催の次世代科学者育成プログラム&未来の科学者養成講座「全国受講生研究発表会」が東京都立産業技術センターで開催され、中学生5人(勝山中学校,久米中学校,城西中学校,東中学校,三津浜中学校からそれぞれ1人)が参加しました。
この発表会の目的は、全国の受講生が交流し啓発し合う機会とすること、また、受講生同士ならびに受講生と所属実施機関の教員のみならず他大学教員を含む全国的なネットワークづくりによって、大学進学後の継続的な研究活動や将来科学者?技術者として活躍していくにあたっての支援環境づくりをめざすものです。
参加した中学生5人は、次世代科学者育成プログラムメニューB採択事業で教育学部が実施している「科学イノベーション挑戦講座」の受講生で、全国の理科を得意とする高校生?中学生たちと一緒に2件のポスター発表(内容は以下のとおり)を行いました。
ポスター1 「環境と生命の関連性に挑戦する」 発表者:武市昂己さん、石川裕太さん、深見正徳さん
本研究は、武市さんが小学校から継続的に調査した結果をまとめたものです。武市さんは、小学生から中学2年生の間に、松山市を流れる石手川の上?中?下流の3地点において、環境指標生物、化学的酸素要求量(COD)、リン酸濃度を測定して、環境汚染の度合いを調べていました。そこで、この研究では、石手川の生物や水質、周辺の環境を調査し、石手川が周辺環境にどのような影響を与えているかを分析することを目的としました。
河川は一般的に上流から下流に向かって汚染度が高くなるため、石手川でもそうなると予想しましたが、結果が異なっていました。リン酸濃度は下流に行くに従って汚染が高くなりましたが、環境指標生物およびCODは中流がもっとも汚染が高いことが明らかになりました。これは、石手川中流域に住宅が密集している松山市の地理的要因によるものと推測されます。
深見さんは、植物の成長と水の関係について興味をもち、水道水、天然水、ドクター水素水(※)の3つの水を使って、カイワレ大根を栽培し、水による生長の違いを調べました。その結果、カイワレ大根の生長度合いは、ドクター水素水>天然水>水道水の順番となることを明らかにしました。担当教員からは、多角的に環境分析に挑戦する点が評価されました。
(※ドクター水素水とは、株式会社FDR?フレンディアの登録商標で、マグネシウムと天然石を含んだスティックを使うことで得られる水素豊富水とされるものです。この水素豊富水は切り花の持ちが良いとされていますが、本研究は生徒が独自に行ったものであり、この水の効能に関して本学で保証するものではありません。)
ポスター2 「DNAの抽出に挑戦する」 発表者:黒星きららさん、河本優奈さん
本研究では、生命の設計図であるDNAについて興味があった2人が、DNAがどのようなものか実感したいと考え、DNAを簡単に取り出せる実験を行うことを計画しました。
そこで、植物の種類によるDNAの含有量を、たまねぎ、ミニトマト、もやし、かぼちゃの4種類の野菜を使って調べました。その結果、DNAがとれた量は、たまねぎ>かぼちゃ>ミニトマト>もやしの順番になることを明らかにしました。
また、たまねぎでも、根と中心部で比べると、根の方がDNAがたくさんとれることから、細胞の大きさがDNA含有量に大きく影響していることが明らかになりました。DNAはすべての細胞の核に存在するので、細胞の数が多いほどたくさんとれます。根の部分は細胞が小さいのでたくさんのDNAがとれたと推測しています。今後は、他の植物や動物でも試してみたいと考えています。
担当教員からは、生物の形態の違いに注目し、その違いを生み出すDNAを抽出することで、実感を伴った理解を得ようとする試みと、実験を行うだけでなく、そこから新たな問いを生成して調べるという挑戦を行っている点が評価されました。
発表会は、最初こそ戸惑いがちでしたが、発表を繰り返すごとに驚異的な成長を遂げ、最後には研究者として整然と自らの研究内容を説明し、多様な議論ができるようになりました。多くのディスカッションによって、今後の研究の示唆がたくさん得られたようです。
また、今年度は、講座OB?OG の参画枠を拡大し、参加受講生の横のつながりだけでなく、縦のつながりならびに講座OB?OG同士のつながりをつくる機会をもちました。
中学生は、開会式でOB?OGの先輩方の話を聴き、自分たちの将来について思いを馳せました。また、初めて科学者たちや同世代の全国の科学者の卵たちに囲まれた交流会では、全国の理科を得意とする高校生や中学生と名刺を交換することができました。このことで、全国にたくさんの知り合いができ、今後全国の仲間たちとの絆によって、新しい世代の科学の世界をつくっていくことと思います。彼らが愛媛を代表する科学者として活躍する日が楽しみです。
科学イノベーション講座は、次回12月14日(土)に「地震の対策に挑戦する」というタイトルで、教育学部理科教育専修の高橋治郎教授が行います。
<教育学部>