地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)では、ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD=ヒメダイヤ)に続き、高温高圧合成技術を用いた新物質、ナノ多結晶スティショバイト(NPS)の合成を2012年に発表しました。
高温高圧下で合成したNPSなどのナノ多結晶セラミックスは、硬い(高硬度)上に割れにくい(高靱性)という従来の常識を覆す性質を持っています。GRCらの研究グループは、このような「スーパーセラミックス」の割れにくさを説明する、新しいメカニズムを提案しました。
本研究は、ドイツ放射光実験施設の西山宣正研究員(前GRC准教授)を中心に、GRCの大藤弘明准教授、入舩徹男教授、工学部機械工学科の松下正史講師、高橋学教授および科学技術振興機構(JST)、東京工業大学、物質?材料研究機構、高輝度光科学研究センターなどの研究者からなる国際共同研究チームにより、JSTのさきがけプログラム「新物質科学と元素戦略」の支援を得て行われました。研究チームでは、NPSの高温高圧合成、透過電子顕微鏡観察、放射光X線分析、硬度測定などを行いました。その結果、NPSの破断に伴うアモルファス(非晶質)シリカの生成が割れにくさの要因であると結論しました。このように、有用物質の新規合成に加え、その特徴的な物性がなぜ生じるのかを明らかにすることは、さらなる新規物質の探査や産業応用の上で重要です。
GRCでは、地球深部科学の先端的研究とともに、工学部?理学部の教員との共同研究により、超高圧を利用した新しい物質科学の創成を目指しており、今回の成果はその一つの表れといえます。
本研究成果は、分野を越えて重要な研究成果に対し、迅速な発表を目的として2011年にネイチャー出版(英)により創刊された、電子版ジャーナル「サイエンティフィックレポート」誌の10月9日付で公開されています。
発表論文
Nishiyama, N., Wakai, F., Ohfuji, H. et al., Fracture-induced amorphization of polycrystalline SiO2 stishovite: a potential platform for toughening in ceramics, Scientific Reports, 4, doi:10.1038/srep06558.
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