平成26年3月12日(水)、入舩徹男地球深部ダイナミクス研究センター長が、オーストラリア地質学会(GSA)のA.E. Ringwood Medal2014年受賞者に選出されました。
オーストラリア地質学会(Geological Society of Australia, GSA)は、1952年に設立されたオーストラリア唯一の地球科学関連の学会です。GSAでは、オーストラリアを代表する地球科学者A.E. Ringwood故オーストラリア国立大学教授の業績を記念して、2012年に同教授の名前を冠した賞を創設しました。
A.E. Ringwood Medalは、地球の基礎的なプロセスに関する研究においてすぐれた貢献をした国際的に著名な研究者1人に贈呈されます。第2回となる本年は、2014年7月7日(月)?10日(木)にNewcastleでおこなわれるオーストラリア地球科学会議(AESC-2014)において授賞式と受賞講演が行われます。
A.E. Ringwood教授は、地球と月の起源に関する重要な業績をあげるとともに、高圧実験に基づく地球内部の探査においても先駆的業績をあげました。地球の体積の8割を占めるマントル中のほとんどすべての高圧型鉱物が彼の研究室で合成された事はよく知られています。後に隕石中などから発見されたこれらの高圧型鉱物は、同教授およびその共同研究者であるA. Major氏の名前にちなんで、RingwooditeやMajoriteなどと命名されています。また、1966年にRingwood教授が発表した「パイロライトモデル」は、マントルの化学組成の標準モデルとして世界的に広く受け入れられています。
入舩センター長は、1980年代半ばに約3年間、博士研究員としてオーストラリア国立大学で研究に従事するとともに、帰国後も同教授が亡くなる1993年まで共同研究を行いました。今回の受賞は、以下のような業績が高く評価されたものです。
1)沈み込むプレート関連物質の地球深部での挙動の実験的解明
2)放射光X線その場観察実験によるマントルおよびプレート物質の相変化及び密度?弾性波速度変化の解明
3)超高圧実験を利用したナノ多結晶ダイヤモンドの合成と応用
なお、Ringwood教授と入舩センター長が1988年にNature誌に発表した、沈み込むプレートの挙動に関する「メガリス」モデルは、その後地震波を用いたイメージング(地震波トモグラフィー)により実証されるとともに、映画「日本沈没」(2006年)において、日本列島沈没のメカニズムとして採用されたことでも広く知られています。