谷口義明宇宙進化研究センター長の研究グループが、すばる望遠鏡を使って銀河合体の謎を解明しました。
今回の研究成果が、平成21年6月7日(日)から米国カリフォルニア州パサデナで開催される第214回アメリカ天文学会において記者会見講演として発表されることとなり、これを受けて、平成21年6月8日(月)、大学本部第2会議室において、谷口センター長が記者発表を行いました。
宇宙には、複数の銀河が合体したと考えられる銀河があり、そのいくつかは赤外線で非常に明るく輝く銀河(ウルトラ赤外線銀河)として注目を集めています。これらの銀河では爆発的な星生成現象が起こっていますが、その物理的なメカニズムは不明のままでした。
今回、谷口センター長の研究グループは、国立天文台ハワイ観測所に設置されているすばる望遠鏡で、これまで見つかっていなかった微かな銀河合体の痕跡を撮影することに成功しました。
これにより、ウルトラ赤外線銀河は、合体する銀河の回転と合体の軌道が同期している、順行合体により形成された可能性が高いことがわかりました。順行合体の場合、効率よく星生成の元になるガスを合体銀河の中心領域に運ぶことができます。そのため、激しい星生成が起こり、周りにあるダスト(塵粒子)を温めて、赤外線を大量に放射するのでウルトラ赤外線銀河として観測されることになります。
谷口センター長は、「今回の発見は、すばる望遠鏡の非常に優れた撮像能力によるところが大きい。」と話しており、今後も、この世界最高性能の大型光学赤外線望遠鏡であるすばる望遠鏡で、宇宙の謎が解明されていくことが期待されます。
ウルトラ赤外線銀河の代表格 Arp220の可視光写真
(左)パロマー天文台のヘール望遠鏡で撮影
(右)すばる望遠鏡で撮影
左の写真では見えていない微かな合体の痕跡が、右の写真では銀河を取り巻くように見えています。
(出典:H.C.Arp、1966、The Astrophysical Journal、Suppl.14、1A)
すばる望遠鏡で撮影された、ウルトラ赤外線銀河の一つ、アンテナ銀河。左下の図は痕跡の一部のクローズアップで、この部分が新たに発見されたものです。(擬似カラー表示)