「2型糖尿病遺伝子変異」について、本学医学部臨床検査医学牧野英一教授の研究グループが初めて明らかにしました。
糖尿病は代表的な生活習慣病のひとつである。日本人の糖尿病の95%を占める2型糖尿病は、何らかの遺伝素因に、肥満、運動不足、過食、ストレス、加齢などの環境因子が加わり発症する。その成因として、血糖を下げるホルモンのインスリンが効きづらくなる状態“インスリン抵抗性”が重要である。
脂肪細胞から分泌される生理活性分子をアディポサイトカインという。その一つであるレジスチンがインスリン抵抗性を引き起こすことがマウスの実験で明らかにされてきた。しかし、人の糖尿病における意義は一定の見解がなかった。
今回、本学医学部臨床検査医学(糖尿病内科)の牧野英一教授、大澤春彦助教授らは、福井大学の山田一哉助教授や東京大学の大橋順助手らとの共同研究で、2型糖尿病の発症リスクを規定する変異をレジスチン遺伝子の産生(転写)調節領域に同定した(米国人類遺伝学会誌10月号に掲載)。
この場所のDNAの塩基はCの場合とGの場合がある。DNAは2対あるので、各個人の遺伝子のタイプは、C/C、C/G、G/Gの3通りになる。各550名の解析では、G/G型を有する人は2型糖尿病患者では14%、健常者では8.5%であった。統計的に計算するとG/G型では、約2倍糖尿病になりやすいことがわかった。実験的にも、Gを有するDNA配列には、Spという遺伝子の産生を調節する蛋白(転写因子)が結合し、レジスチンの産生能(転写活性)を4から10倍に増やすことを証明した。さらに、2型糖尿病患の血中レジスチン濃度は、G/G型でC/C型の約2倍に上昇していた。また人種を超えてG/G型がリスクをあげることがわかった。
今回の発見は、レジスチン遺伝子型の検査により2型糖尿病発症リスクの高い人を見出し、糖尿病発症予防に役立てられる。また、レジスチンの産生量を制御する新たな糖尿病治療薬の開発にもつながる可能性がある。 ?医学部総務課総務係