上級研究員センターと地球深部ダイナミクス研究センターは、マントル最下部の物質に関する新しい研究成果を発表し(米国科学アカデミー紀要電子版11月26日、冊子版12月9日付)、平成20年12月8日(月)に記者会見を行いました。
「米国科学アカデミー紀要」(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, PNAS)は、「ネイチャー」誌、「サイエンス」誌に並び、高いインパクトの研究成果が発表される総合誌です。
今回の研究成果は、地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)数値計算グループの一員として研究活動をおこなっている上級研究員センターの土屋 旬上級研究員とGRCの土屋卓久准教授とによるものです。
土屋上級研究員らは、第一原理電子状態計算法に基づいて、最下部マントル主要構成鉱物であるMgSiO3ポストペロヴスカイトの安定性に対するアルミニウムの固溶効果を詳細に調べ、固溶体の新たな結晶学的性質を見出しました。また、マントルに想定される量のアルミニウムを含むポストペロヴスカイト転移が、下部マントル最下部のD”(ディーダブルプライム)層の圧力領域において、地震波速度のシャープな変化を生じること示しました。
今回の研究において開発された計算手法である多配置サンプリング法は、今後、鉄固溶体への応用なども可能で、数値計算に基づく地球深部物質学の新たな展開への重要な貢献が期待されます。
本研究は、地球深部の複雑な化学組成を持つ物質の、高温高圧下での挙動を理論的に解明する上で重要な手法を提示するとともに、D”最上部のシャープな地震学的不連続面の原因を明らかにした点でも重要です。
県庁内の番町記者クラブで行った記者会見では、土屋上級研究員が成果を説明、各報道陣からは、次々と質問が出されました。
なお、上級研究員センターとは、若手研究者が自立して研究できる環境を構築するために、先端的研究拠点の施設等において若手研究者に自立性をもって活躍する機会を与え、次代のリーダーを育成することを目的として10月1日に設置したセンターです。