本講義は医師の常識として必要な耳、鼻、口腔、咽喉頭、顔面、頸部の疾患について理解するとともに、これらの領域に疾患を持つ患者に対して、適切なアドバイスと処置を行うことができるための基本的知識を身につけることを目的としています。医師としての資格を有し実際に本学の医学部附属病院等で臨床実務にあたる教員が、その経験と見識を生かして、講義で得られた知識を臨床現場に応用するという観点から解説を行います。
授業内容
※広報課の職員が実際に受講しました。
この授業は、複数人の教員が講義を担当しており、今回は頭頸部外科の三谷先生の授業を取材させていただきました。医学系の授業になじみがない状態でどれほど理解できるのかという不安がありましたが、非常に丁寧で分かりやすい説明でしたので、興味深く話を聞くことができました。
三谷先生の担当は頭頸部癌に関する授業で、そもそも頭頸部とはどこを指すのか。脳と眼球を除いた首から上の領域であるという基本的な説明に始まり、口腔癌や鼻?副鼻腔癌といった頭頸部癌の種類が示され、それぞれの癌について、特徴や傾向、治療法などが説明がありました。
授業で使用される資料はシンプルで伝わりやすく、それぞれの癌について、同じパターンで説明していくため、比較しながら理解することができます。また、授業の所々で、受講生に対してクイズ形式の質問が投げかけられ、その結果がワードクラウドのような形でタイムリーに表示されるなど、全体を通して視覚的に記憶に残ることが理解を助けている印象でした。


授業の後半では、首から舌を取るという手術の様子の動画が流され、非常にリアルな映像に正直少し目をそらしたくなる思いもありましたが、それが決して難しい手術ではなく、日常的で短時間の手術であるというお話には、改めて医師という仕事の偉大さを感じました。
その他、留学してロボット手術を見学した話や、VRを使った手術トレーニングの紹介もあったりと、短い時間の中で経験に基づく様々なお話があり、難しい内容でも、重たくならない雰囲気の授業は、日々努力されている医学生の皆さんを明るく導いてくれることと思います。


教員からのコメント
臨床医学科目は医学科4年生を対象とし、基礎医学で培った知識を臨床へ“つなぐ”架け橋となる講義です。「耳鼻咽喉科学」では、聴覚?嗅覚?発声などの五感を守り、呼吸や嚥下といった生命活動を支える耳鼻咽喉科頭頸部外科領域を扱い、22コマ(各60分)にわたり、耳、鼻副鼻腔、咽喉頭、頭頸部腫瘍など多彩なテーマを体系的に学びます。ときには、全国で活躍する本学ゆかりの著名な先生方も登壇し、最先端の知見からキャリアパスまで幅広い話題を共有してくださる点も魅力です。
本講義の前半では、医師国家試験でも問われる頭頸部癌の疫学?診断?治療などの一般的な知識を整理しました。続いて、解剖学で得た立体的な人体構造の理解を、頭頸部外科の手術プランニングにどう落とし込むのかを、実際の手術動画や3Dモデルを用いて解説しました。さらに、当科が導入しているバーチャル?リアリティを活用した先進的な手術教育システムについても紹介しました。
本講義を通じて、感覚を扱う外科としての魅力を実感し、これから始まる臨床実習への好奇心を刺激するとともに、医師としての将来像への明るい一歩を後押しできれば幸いです。
受講学生のコメント
医学部医学科4年生 柴崎 瞳 さん
この授業では、耳?鼻?のどだけでなく、頸部?顔面を含む幅広い疾患について、解剖や生理機能を基盤に診断?治療を学びます。特に、聴覚や嗅覚、発声、嚥下など、人間らしい生活に欠かせない感覚や機能を支える領域を扱う点が特徴的であり、疾患が患者のQOL(Quality of Life)や社会生活に及ぼす影響の重要性を改めて実感します。
取材のあった授業では、まず頭頸部癌について、癌の種類、症状、治療選択(手術?放射線?化学療法)等について、幅広く学びました。後半は、VR技術を活用した手技トレーニングの紹介がありました。私自身もこのVRを体験させていただいたことがあり、目の前に広がる3D映像によってまるで実際の手術を行っているかのような感覚を得られたことを思い出しました。繰り返し安全に練習できるこのようなシステムが、学びの質を大きく向上させると実感しました。最新技術を活用した教育の在り方に、強い関心と期待を抱きました。