この授業では、微分や積分などの高校数学を復習した上で高校物理に応用し、高校物理で習った公式を再評価していきます。これにより、公式の成り立ちや定義などを理解し、スムーズに専門科目へ移行することができる能力の修得を目的としています。
授業内容
授業の進行は、オリジナルのレジュメにより行われ、ポイントとなる概念や数式及びその計算過程などが白抜きとなっているため、受講生は解説を聞きながら、その白抜きを埋めていました。
取材を行った授業のテーマは、力学的エネルギーとその保存則についてでした。高校物理で習った仕事(Work)や運動エネルギー、ポテンシャルエネルギーの概念について、大学物理における新たな考え方やその成り立ちに関して解説が行われました。以前は、ただ記憶しただけの公式が、この授業の中で分解されて、ひとつひとつの現象を示す数式と微積分を用いることで、公式の本当の意味?定義を学んでいました。
その中で、物理学の世界では、どれだけの力でどれだけの距離を動かしたかによる「仕事」について、日常生活での「仕事」と物理学における「仕事」は異なる概念であることが説明されました。その例として、人間が力を加えて荷物を持ち続けていても、それを動かさない場合は、仕事としては「ゼロ」であるとの紹介がありました。
「参考:物体に一定の力Fを加えながら、力の向きにsだけ動かしたとき、力は物体にW=Fsの仕事をしたという」
また、運動エネルギーやポテンシャルエネルギーの概念では、同じ現象を微分的にとらえるか積分的に捉えるかという考え方が、今後の専門教育に進む上で重要になると説明があり、本授業の前半で学んだ高校数学における微分や積分が、それぞれの公式の理解を深めるための手法として活用されていました。分解された公式からひとつひとつの現象?定義を理解し、その成り立ちを学ぶことができる授業内容となっていました。
授業の最後には、その日に習った概念や定義を使っての演習が行われ、しっかりとその考え方を理解できているかの確認を行っていました。その場で、受講生からの質問を受け付け、次へのステップアップのためにもしっかりとした土台となる考え方が定着するよう、丁寧な解説が行われていました。また、後日提出のレポート課題もあり、復習?演習を繰り返すことで基礎を固めることができるプログラムになっています。
教員からのコメント
物理学とは「もののことわりをまなぶ」と書くことからも分かる通り、自然界の様々な現象が生じる仕組みや論理を扱う学問を指します。人類が自身を取り巻く世界を定量的に理解するための強力な手段である物理学は、理系の大学生にとってはまさに必須の学問といえます。
しかし、物理学と聞いて、なにやら謎の記号が並んだ公式をたくさん覚えてひたすら計算をさせられた、といった辛い記憶を思い出し、苦手意識を持ってしまっている学生も多いかもしれません。その理由の一つとして、高校物理の学習の場面において、様々な現象の定量的記述を行うための技術として欠かせない微分?積分の手法がうまく活用されていないことが挙げられます。
そこで本科目では、高校数学で学んだ微分?積分を物理学の立場から見直し、高校物理で学んだ様々な概念を微分?積分の手法で取り扱うための考え方を学びます。本科目「物理学I」で微分?積分を活用した物理の考え方をしっかりと身につけることで、物理学には多数の公式の丸暗記が必要だなどといった誤ったイメージを払拭していただき、物理学がシンプルな論理で多様な現象を理解できる面白い学問なのだということを感じていただきたいと思います。
本科目が更に専門的な力学や電磁気学といった物理学を楽しく学んでいくための準備にもなれば幸いだと考えています。
学生からのコメント
理学部理学科 BRENNAN TOMI(ブレナン トミ) さん
私は、この講義で、物理は方程式を覚えて解くものではなく、微積分でそれぞれの方程式を導き出して解くものであることを初めて知りました。このことに気がついたことで、高校で学んでいない空気や水抵抗を考慮しなければならない条件下での難しそうな問題を簡単に解けるようになりました。
授業中は、スライド資料や説明に加え、先生による現物を使った演出もあり、わかりやすくいろいろな概念や計算を説明してくれます。この講義を受ける前に、ある程度数学IIIの知識は必要ですが、授業中はゆっくりと計算を分解し、一つ一つのステップを解説してくれるので、数学がちょっと苦手な私でも、安心して授業に追い付くことができます。そして授業の終わりに具体的な問題演習をして、その提出がその授業の出席となります。これと宿題の演習で授業内容は振り返ることができ、さらに理解も深まります。
この授業で大学物理の基本を身につけて、物理を使ってできることがたくさん増えるので、物理に少しでも興味のある人はぜひ受けてみてください。