この授業では、英語習得や異文化適応などに関する英語論文を丁寧に読み解き、理解を深めるとともに、受講生同士のディスカッションを通して、英語学習?教育についての自身の考えを振り返ります。ゼミ生については、様々なディスカッションから興味のあるトピックを見つけ、卒業論文につなげていきます。
授業内容
「今日の席替えは、私(教員)とのじゃんけんで決めるそうです」
このような呼びかけから授業はスタートしました。授業では、毎回グループディスカッションを行うため、同じ人とばかりのディスカッションにならないように、必ず席替えを行います。席替えの方法は、その日の担当の受講生が提案します。席替えを終え、講義は、担当の受講生が、教材となっている英語論文に書かれている内容を説明することから始まります。
この授業では、開講期間中に英語で書かれた3~4本の論文を教材として取り上げています。学期はじめに、あらかじめ授業日ごとの担当者を決めておき、担当者は授業当日に論文の解説を日本語で発表します。受講生は皆、論文を熟読し、事前に課題と質問を提出しています。
取材した日は、英語でのコミュニケーションにおける国際的志向性の重要性に関する論文で、研究者によるアンケート調査の結果や分析方法について述べられていました。
担当者の発表に対し、教員は補足や解説、アドバイスを行い、受講生からの質問に対する回答も行います。質問の内容は英語での表現方法にはとどまらず、論文の内容そのものについての質問も多く、受講生がしっかり読み込んでいることが伺えます。
英語論文を訳すことはもちろん、その論文の内容を理解することが目的となり、更には英語での論文の書き方まで学んでいきます。
授業の後半は、3~4人のグループに分かれてのディスカッションで、テーマは、担当者がその日の論文の内容に関することから決めており、この日は日本での英語コミュニケーションに必要となる要素は何かといった内容でした。ディスカッションの後は、各グループの代表が意見をまとめて発表します。
授業全体を通して、受講生達が自由に意見を出し合っている雰囲気が印象的で、一番の特徴は、教員から質問や問いかけがあった際、指名しなくても自然と誰かが発言し合っていることにあります。挙手して、指名して、起立して発言するといったスタイルではなく、受講生の自主性に任せて進められています。このスタイルも異文化適応に関する学びの一つといえる授業です。
教員からのコメント
皆さんは、これまでなぜ英語を学んできたか、考えたことがありますか?中学、高校と教科だから何となく、あるいは、入試で必要だから、という人から、将来、英語を使って仕事をしてみたいから、という人まで、様々ではないかと思います。このような「なぜ英語を学ぶのか」という疑問は、私が専門とする「外国語学習動機づけ」と呼ばれる分野の中心課題で、日本人英語学習者を対象とした学習動機づけ研究は、世界的にみても非常に活発な状態が続いています。
授業では、この「動機づけ」をはじめとして、英語の学習?習得に関する、英語で書かれた様々な論文を読み、内容に関するディスカッションを通して、受講生のこれまでの英語学習の過程を振り返ったり、今後の学習?教育について考えたりします。また、最近では、英語に加えて、英語以外の言語も同時に勉強している学習者を対象にした研究も紹介し、広く「言語を学ぶとはどういうことか」について、受講生と一緒に考えています。
いろいろな論文を材料として英語の学習?習得について考えることで、ご自身にとって英語が持つ意味、あるいは広く言語が持つ意味についての考え方にも変化があるかもしれませんし、英語をはじめとして、いろいろな言語を学んでみよう!という意欲がわいてくるかもしれません。一緒に英語の習得や言語の存在について考えてみませんか?
学生からのコメント
法文学部人文社会学科 4回生 矢野 菜々美さん
この授業では、英語などの第二言語を学んでいるときに、その人の中では何が起きているのか、ということを様々な角度から学ぶことができます。例えば、外国語を使って話す時、積極的に話す人、なかなか話せない人など、様々な人がいると思います。その人たちの違いは何なのでしょうか?このような言語習得に関する研究の論文を読み、ディスカッションを行うのがこの授業の特徴です。
また、この授業の軸は、先生による一方通行というより、学生と先生双方向、学生同士の「対話」にあると思います。この点は、高校までの授業との大きな違いかもしれません。英語論文の主たる説明を行うのも、ディスカッションのテーマを決めるのも学生です。先生は、学生の説明の補足と、質問の回答をしてくださいます。このような柔軟性のある形式によって、受講生の好奇心を存分に発揮することができます。
ディスカッションは、様々な考えを持っている人たちがいる方がずっと面白いです。一緒に話しましょう!