この授業では、小学校図画工作科を担当するために、図画工作科の目標や内容を理解し、教材の開発や指導方法などの学習指導にかかわる実践力を身につけることを目的としています。
授業内容
学生たちは、これまでの授業で、様々な素材体験を通して、造形活動の中で営まれている子どもの「学び」について学習してきました。今回は、グループで授業を立案し、その導入部分を発表しました。学生は、授業者、児童役、観察役に分かれ、授業者はいかに児童の興味を引き付けられるかがポイントとなります。
切り紙を題材に選んだグループは、切り紙で図鑑をつくる授業を考えました。授業者は「この形は何に見えるかな」と児童役に話しかけながら、いろいろな形に切った切り紙を前に示しました。そして、児童役に折り紙を折って切るという活動を促しました。ここまでがこの授業の導入になります。この授業を設計した理由について、「数学的要素を取り入れたかったので、左右対称になる切り紙を選んだ」と説明しました。教員からは、「先に見本を示さず、児童に自由に折って切って遊ばせても良いのでは」とのアドバイスがありました。
仮面を題材に選んだグループの授業は、授業者がいろいろな仮面のキャラクターに扮し、仮面劇から入りました。そして、児童に仮面に触れた感想を聞き、紙粘土や落ち葉など様々なものが材料になることを説明しました。実際の授業では、ここから仮面の製作に入っていきます。
教員は、「知っているキャラクターを出してしまうとオリジナリティが薄れる可能性がある。低学年には板書をうまく活用すると良い」と助言しました。
このように、学生たちは、実際に模擬授業を立案?実施することで、これまで学習してきた内容や図画工作科の授業についてのたくさんの「気づき」を得ることができたのではないでしょうか。今後も教員の指導によって、児童が自由な発想で楽しく造形活動を行うための手法や、題材を通して資質能力を伸ばす方法を学んでいきます。
教員からのコメント
本授業は、子どもたちにつくったりあらわしたりすることの「楽しさ」を伝えることができるような教員になってもらいたい、そんな願いを込めています。「楽しい」を子どもたちに伝えるためには、伝える側である学生自身に「つくる喜び」を味わえるような体験が必須になります。授業では造形活動を実際に自分たちで経験することを通して、子どもの絵に現れる発達段階や子どもの造形プロセス等の理論的な内容の理解を深め、授業を立案?実践する力を培っていきます。
子どもたちにとって、何かをつくったりあらわしたりすることは本来「楽しい」ことだと思います。しかし、本来「楽しい」はずの活動が何故「楽しくない」活動になるのか。子どもたちの「楽しい」を保障するために教員ができること、しなければいけないことは何なのか。子どもたちに寄り添うだけでなく、こうした「問い」を常に持ち続けられるような教員になってくれることを期待しています。
学生からのコメント
この授業では、これまで子どもの絵の発達の過程や図画工作科での学びについて学習を進めてきました。これらの学習を通して、図画工作科における教員の関わりの重要性や、図画工作科の中で子どもたちがどのように学び成長していくのかを考えています。さらに、学生自身も実際に図画工作科の授業で使われる“素材”と触れ合ったり、実際の授業の様子を見たり、現場の授業を受けたりすることで、授業づくりのストックの1つとすることができます。
授業では理論を学ぶだけでなく実践に繋がるよう、自分たちが子どもたちにどういう授業を展開するかを考えていきます。そして班ごとの模擬授業を行い、受講生全員でよりよい授業がつくれるようにコメントをします。
このように、理論に関しても実践に関しても自らの手を動かしていく中で学習し、受講生全員が各々の学びを深めることができる「初等図画工作科教育法」を、皆さんも受講してみませんか?