この授業では、イネをはじめ食用作物および工芸作物の形態、生理ならびに生態学的特徴について学ぶとともに、各作物の原産、伝播経路、栽培管理、国内および世界における生産状況、生産物の品質、生産物を利用した加工品について理解を深めることを目的としています。
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授業内容
今回の授業では、イネの進化と伝播について学びました。冒頭に教員から、実際に鉢に植えられた食用と飼料用の2種類のイネが紹介され、スライドを使って説明が進められました。
イネは、イネ科イネ属に属しており、 20種の野生イネと2種の栽培イネがあります。野生イネとは、発達した地下茎により繁殖する多年生植物です。一方、栽培イネは1年生あるいは多年生で、アッサムから中国雲南省を原産地とするアジアイネと、西アフリカを原産地とするアフリカイネが含まれます。イネ属植物は、脱粒性(種を広範囲に落として生息を広げる性質)のある野草種から、人間の食用に開発された難脱粒の栽培種に進化してきました。教員から、アジアイネとアフリカイネの進化過程について、具体的なゲノム(遺伝子)や品種を含めた解説がありました。
また、イネの種類にはインディカ型、ジャポニカ型、ジャヴァニカ型があります。私たちが日常目にしているのは、アジア温帯やアメリカ?オーストラリアを栽培地域とするジャポニカ型で、低温耐性が大きいという特徴があります。
続いて、イネの生産についての説明に移りました。世界のイネ生産量のうち、90%以上が高温多湿なアジアモンスーン地域で生産されています。教員から、国内では350?400品種の米が作られているが、ほとんどがある同一品種を交配に使用しているため、遺伝子上何か問題があったときに打撃を受けてしまうという課題が挙げられました。実際に、西日本のイネには温暖化による品質面への影響が出ているようで、避けて通れない問題だと言えます。
授業後には、教員に質問をする熱心な学生がいました。近い将来、この授業から、日本の農業を担う人材が輩出されるのではないでしょうか。
教員からのコメント
我々が食卓で口にするご飯。どこかへ行くときに目にする田んぼ。お米は日本そしてアジアの人の生活に密接に関係しています。おこめやイネについて学習すると、イネの進化とともに人類の進化も理解することができます。
国内で生産されたお米は収量、食味品質、見た目(外観品質)の3点が重要です。とくに食味と外観品質は消費者の購買意欲に大きく影響を与えます。しがたって生産者は、見た目がよく、おいしいお米を作るために栽培する品種、栽培管理に気をつけています。
学生からのコメント
今回の講義内容はイネについてで、イネの進化と伝播、形態を学びました。お米は私たちの主食であり、イネは私たち日本人にとって関係の深い作物です。しかし、これまでイネについて詳しく学ぶ機会はありませんでした。イネは全国で栽培され、特に新潟県や北海道で盛んに生産されています。北海道は土地も広く、日本有数の米どころであり、稲作には長い歴史があるものだと思い込んでいました。ですが、実際に北海道で稲作が普及したのは明治に入ってからであり、普及からまだ130年ほどしか経っていないというのは驚きでした。
今回の講義を受けて、最近では米の消費量をパンの消費量が上回るなど、米離れの加速が囁かれていますが、私たち日本人の主食はやはりお米であり、日本人である以上、イネについてある程度の知識は持っておかなければならないと感じました。