この授業では、現代地域における課題について、文献講読?資料収集?データ処理?インタビュー等など様々な手法を駆使して把握?理解し、原因を究明します。そのうえで、今後の地域社会について考えます。
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授業内容
この授業では、「空き店舗問題」研究の一環で、今治商店街協同組合と協力し、商店街で開催される土曜夜市でのイベントの企画?運営に取り組んでいます。学生は、『タオル投げ』や『じゃこ天食い競争』などのイベントを企画、実践し、現場で持ち上がった課題を授業内で共有しながら、次に活かしていきます。
景品のお化け屋敷無料券を集中的に配布したことで、お化け屋敷が混雑したという反省から、出店側との連携強化が課題として挙げられました。また、スケジュール通りに運ばず、その場しのぎで乗り切った場面があったという声からは、「イベントには柔軟性が必要」という気付きが得られたようでした。 活発な議論は学生主体で進みますが、教員が要所要所で意見を整理し、新たな発想や切り口へと導きます。「次週に持ち越し可能な無料券は、最終週は持ち越せないよね」と教員が投げかけると、「交換用の景品が必要」「景品は何にするか」と議論が深まっていきました。
後半は研究テーマに立ち返り、教員主導で進みました。「普段から子どもが集まれば商店街が活性化するのでは」という意見から、「子どもが商店街に来ることが活性化なのか」、「子どもが落とすお金で経済が回るのか」といった疑問が出てきました。そこから、次回子どもの所持金調査の実施が検討されました。
また、イベントを目的別に、集客型と販促型に分けることができるとすれば、夜市は集客型と販促型の両方の要素を持ちながらも集客型に傾斜したイベントと言えるようです。「夜市は空き店舗問題にどのような効果があるか」という教員の問いに、集客型目線では、「今後の出店者にとって、場所柄や客層を知る機会になるのでは」という意見が出されました。
フィールドワークでの生の情報に触れ、“単なるイベント”ではなく“研究”として、真摯に課題に向き合う学生の姿が印象的でした。
教員からのコメント
今期の専門演習では、今治市の中心市街地を事例にして、商店街の空き店舗問題について考えています。このテーマは昨年度後期の基礎演習における議論を引き継いだものです。
空き店舗問題は奥の深い問題です。少なくとも、どんな業種でもよいから空き店舗を埋めればよいというわけではありません。その商店街にとって必要な業種を埋めることが肝要です。しかし、空き店舗物件の持ち主(貸し手)はそのようには考えないかもしれません。持ち主は、高い賃料を払うことのできるテナントであれば、どのような業種であるかについては気にとめない傾向があります。つまり、まち全体の意向と物件の持ち主の意向が一致するとは限らないということです。ここに空き店舗問題の難しさの一端があります。 上記のような議論をさらに掘り下げるためには、商店街関係者のみならず、物件の持ち主、さらには周辺住民など、多様な主体から聞き取り調査をおこない、立場によって考え方に違いがあることを理解する必要があります。
このような問題意識で研究を進めようとしていた矢先にいただいたのが、今治夜市の開催期間中(6月28日?8月9日の期間中の毎土曜日〔ただし8月2日は除く〕)に実施するイベントの企画?運営についての依頼でした。イベントの企画?運営それ自体は、上記の問題意識に直結するものではありませんが、次のような意味でまったく無関係とも言い切れません。第1に、商店街で開催されるイベントは、それ自体、空き店舗対策の一環とみなすことができます。そして第2に、商店街イベントへの積極的関与は、商店街やその周辺で暮らす方々との間にラポール(調査協力者との良好な関係)を確立するためのきっかけとなる可能性が高い点です。
なお、上記イベントの企画?運営については、今治明徳短期大学幼児教育学科の正岡節子先生や同学科の学生さんたちと合同で進めてきました。この場を借りて、御礼申し上げます。
学生からのコメント
私たちのゼミでは、商店街をテーマに4月から今治商店街で調査を行っています。その中で、今治夜市に携わらせていただくことになり、現在は今治商店街の方々、市役所の方々、他大学の方々と協力し、イベントの企画?運営をしています。
企画?運営に実際に関わらせていただく中で、商店街の現状や問題点、イベントをする際の課題などが見えてきました。これをゼミ生と教員で共有し、意見を交わしながらテーマである商店街、そして空き店舗問題について考えを深めています。
私たちのゼミでは、実際に現地に出向いて調査をするということを重視しているので、他の地域の商店街にも足を運んで、見て聞いて吸収していきたいと思っています。授業時間外の活動が多いですが、常に笑顔の絶えないゼミであり、ゼミ生と教員が協力しながら活動しています。