得た知識をどうやって実践に移しますか?
※掲載内容は執筆当時のものです。
身のまわりにワクワクを増やすプロジェクトマネジメント教育
研究の概要
皆さんは、「プロジェクト」と聞いて何を思い浮かべますか?ロケット開発やオリンピックの開催など、壮大なスケールのものをイメージするでしょうか?もっと身近にありそうだけどよくわからないな、という人もいるでしょう。「プロジェクト」とは独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務です。プロジェクトの有期性とは、明確な始まりと終わりがあるということです。また、プロジェクトは単独で実行されることもあるし、何十人、何百人のチームで実行されることもあります。つまり、皆さんの周りにはたくさんのプロジェクトが存在します。学校行事の学園祭や運動会、資格取得のための勉強、総体の優勝を目指してがんばる部活動など。また、社会的な課題を市民の人たちと一緒に解決しようと取り組む活動や、人々の暮らしをよくするための製品を開発する研究もあるでしょう。「プロジェクト」の目標達成のために、何をどのようにマネジメントしていったら良い結果を生み出すことができるのか?そんな問いを立てて研究を進めています。
研究の特色
プロジェクトを進めていく上で、チームメンバーに必要とされる主なスキルとして、1.Ways of Working(働き方)2. Power Skills(パワースキル)3. Business Acumen(ビジネス感覚)があげられます。プロジェクトを進める方法論を知っておくことはもちろんですが、メンバーがどのように自らのリーダーシップを発揮していくか、他者と協働できるかが重要になってきます。現在、私の研究では、プロジェクトを成功に導くリーダーシップに焦点を当てています。体系化した教育モデルは、5つのモジュールで構成されています。1知識習得、2.シミュレータでの練習、3.実践での適用、4.振り返り、5.評価です。これらを有機的に配置し、サイクルを回します。
特に注目は、練習のモジュールで、対人関係強化を目的に開発されたシミュレータを活用していることです。シミュレータは、人との様々な関わり方を試すことができ、その疑似体験の繰り返しは、実際の行動への抵抗感を軽減し、知識と実践の橋渡しをします。また反復練習によって、リーダーシップのスキル習得を加速させる効果があります。
さらに授業では、この練習の成果を、PBL(プロジェクト型学習)活動の中で実践適用しています。この学習成果として、学生は知識を行動に結びつけ、プロジェクト目標達成に向かうプロセスにおいてリーダーシップスキルを向上させることができます。
研究の魅力
身のまわりには、たくさんのプロジェクトが存在します。プロジェクトを通して、人間的な成長が期待できます。それは、目標をどうにか達成しようとして工夫したり、勉強したりすること、さらに他のメンバーとぶつかり合いながらも一緒に困難を乗り越えていって、パフォーマンスの高いチームに作り上げる過程を経ることによります。プロジェクトの目標が達成される度に、私たちの身のまわりにワクワクしたものが増えていくとよいな、と思いながら研究を進めています。ワクワク感は、人々を、そして社会をWELLな状態に導くと信じています。私にとって研究の魅力は、試行錯誤を繰り返しながらも、チャレンジしたことで、人の成長する姿を垣間見ることができることです。
今後の展望
コロナ禍での緊急の教育実践をきっかけに、テクノロジーの活用が一層注目されるようになってきました。私の研究と教育実践では、これまでシミュレータを活用してきましたが、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、メタバースなど、学生主導の能動的な授業を促進することができるデジタル技術の活用を試みたいと思っています。さらに、教育のデジタライゼーションを踏まえ、対面とオンラインの融合による効果的な学びについても研究を進めていきます。
この研究を志望する方へのメッセージ
プロジェクトは生き物と同じです。丁寧に情熱をもって関われば順調に進んでいきますが、問題が発生しても、見て見ぬふりをしていては、いつの間にかコントロール不能状態に陥ります。目標を達成するプロジェクトマネジメントに興味がある方、ぜひ一緒に考えてみましょう!