食と農を軸とする豊かな社会と穏やかな暮らしの構築を目指して

 block_27451_01_m産業界では、エコカー、太陽光発電、発光ダイオードなど、我々の暮らしを根底から変えようとする革新が次々と起きています。  
エコカーの中核となるハイブリッドは、そもそも農業から生まれた基本技術です。交雑品種、つまりハイブリッドは、緑の革命を支えた主役だったからです。 太陽光発電も光合作用を活かした農の技術と同じ発想と言えます。農の発想と基本的な技術スキームは、これらの分野で進化を遂げ、人類に莫大な利益と地球環境との共生をもたらそうとしています。  この分野では、食と農と環境を融合した環境保全型農業の成立条件を、生産者、市場、地域、組織、そして政策?制度の諸側面から研究しています。目指すのは、工業の世界に一旦譲った環境技術の優位性を取り戻し、真に豊かで穏やかな暮らしを支える農の黄金時代を築き上げることです。そのための理論体系の構築と、経営?経済装置の開発を進めています。

研究の特色

 block_27452_01_m私たちは、環境保全型農業の展開条件が、1970年代中期頃にすでに成熟したという事実をいち早く突き止め、農法転換を目指す取組みに確かな根拠と自信を与えました。  ほぼ同じ時期に、環境保全型農業に従事する生産者の楽しみと、その生産物を消費する消費者の喜びが調和する「顔の見える取引」の経済理論を確立し、地産地消の可能性、環境に調和した農業技術の開発と普及条件、そのための政策?推進制度づくりの枠組みを提示しました。  さらには、環境保全型農業の拡大?定着を阻む主要因は、経営の不安定性?不確実性にあること、生産性?効率性に優れた経営こそ環境への負荷が小さいことなどの事実を、現場調査と計量検証により解明し、農業経営環境の整備、自治体の施策づくり、政策評価への応用など、研究成果の社会装置化を目指してきました。  現在は、食料、エネルギー、環境問題に同時対応できる仕組みの確立に挑戦しています。

研究の魅力

 block_13021_01_m新しい理論の枠組み構築につながる重要な事実を突き止めたときや、経営?経済装置の開発に結び付く研究結果を仕上げたときは、自分の研究に感動し、興奮します。研究結果を取りまとめた論文原稿を何回も読み返しているうちに、自己陶酔することもあります。研究とは、こうした感動と興奮を生み出すドラマの連続であり、大学はこのドラマを可能にする最高の舞台装置と言えます。ワンダフルの世界です。

研究の展望

 block_27911_01_m原油高の繰り返しとバイオ燃料問題の出現によって、食料、エネルギー、環境問題が1つの軸に統合されつつあります。これらの課題に同時対応できる壮大な学問的挑戦と、社会経済仕組みの確立に向けた取組みが始まったばかりです。  環境保全型農業における経営の不安定?不確実性を引き起こす主要因の1つは、こうした取組から生産される生産物(有機農産物、特別栽培農産物等)やサービスに対する需要不足です。需要不足は取組みの拡大を制約し、高コストの生産構造を生みます。そして、高コストの生産構造が高価格の製品?サービスを生み、需要の拡大を抑制します。現在、私たちは状況の打開を目指して研究に邁進しています。

この研究を志望する方へ

 block_27912_01_m研究には知性、気力、体力が欠かせません。しかし、それ以上に重要なのは、世の中をよりよくしていくロマンを持つことと、人の痛みや悩み、楽しみや喜び(リアリティー)を理解する気持を持つことです。これが研究を持続させる原動力になります。この分野を目指す皆さんと共に努力し、独創的な研究から得られる感動と興奮を分かち合いたいと思います。