スポーツ活動から得られる社会的スキルの可視化への取組

研究の概要

 近年、スマートフォンやウェアラブルデバイス、映像トラッキングなどによって、スポーツ活動を数値データとして捉える環境は整いつつあります。しかし、みなさんがスポーツを経験したり、観戦したりする時に実感する、人々との「つながり」や「協力」「学び」などの社会的な魅力は、まだ十分に可視化や数値化されているとは言いがたい状況にあります。技術革新の著しい現代においても、スポーツ活動が持つ、組織や社会をより良くするスポーツの価値に対する実証への取組は、不十分な状況であると言わざるをえません。
 そこで、スポーツデータである選手の位置データと、社会的心理指標データから得られる客観的データを用いて、スポーツの戦術的変容と選手の社会的変容の相関関係を明らかにしていく、評価システム構築を目指した研究を、サッカーの戦術分析を通じて行っています。

 

研究の特色

 研究は、①スポーツ活動社会的評価システムの構築、②各種評価データの関連性の顕在化、③実社会での実証的研究、これら3つの側面から研究を進めています。

①スポーツ活動社会的評価システムの構築
 高精度なGPS基盤を搭載したボールを開発し、選手とボールの位置データと社会的な心理指標を収集できるシステム構築に取り組んでいます。

 

②各種評価データの関連性の顕在化
 ①から得られるデータから、スポーツの戦術の変容と社会的な変容の関連性を明らかにしていくAIなどを用いた解析を進めます。

③実社会での実証的研究
 研究の結果や解析を蓄積し、実社会で活用できるよう研究を進めていきます。

研究の魅力

 私は、大学で研究を行う前、Jリーグのチームでサッカーコーチをしていました。その時は競技や指導の現場での実際の経験をもとに、競技力や選手の育成を進めていました。この研究を通じて、経験という実践的な知識だけではなく、スポーツ理論のみに限らない理論が融合していくことを感じることが出来ます。また、私一人の力では研究を進めていくことが出来ない領域でもあり、様々な分野の先生方と交流を持つことができ、多様な考え方(理論など)に触れることができます。

今後の展望

 スポーツ活動データから、みなさんが実感しているスポーツの多様な価値を、可視化?数値化していくことで、社会的な側面からも明確に価値を捉えることが出来るようになっていきます。その利点を活かすことで、スポーツ活動を通じた、チームやコミュニティーへの社会的な影響を明確に捉えることが可能となり、より明確な取組を創造していくことが出来るようになります。

この研究を志望する方へのメッセージ

 スポーツは、気晴らしや楽しさを大切にして行うことは非常に重要です。しかし、スポーツへの関わり方は「する」のみにとどまらず、「みる」「ささえる」などをはじめとして、それ以外にも多様に存在すると思います。ぜひ、スポーツにこれまで関わって得てきた経験や知識と、大学でしか探求できない領域での学びとを結びつける研究に取り組んでみませんか。