文化と経済の対話による、中国人の経済行為方式の形成について

chin 私の専攻は近代中国における金融機関史です。簡単に言えば、清王朝の時代における、山西商人と山西票荘及び上海銭荘と商工業の発展について研究するものです。これらの研究を通して、近代における中国民族商工業の発展要因を究明し、そして、金融業と商工業との間に、深い利害関係が存在することがわかりました。その主な原因は中国の伝統的経済文化です。一般的に、社会の原点というのは個人ですが、中国では、この原点は個人ではなく、「イエ」です。この「イエ」の概念は、日本人が普通に考える「家」ではなく、中国人に特有の概念であり、血縁的な経済共同体を意味します。従って、中国社会の経済エートス、文化の出発点は「個人」ではなく、「イエ」といえます。つまり、血縁により、構成された不合理的な経済共同体あるいは生命共同体がその構成員の行動、意識、行為、思想を潜在的に左右しています。これは、中国人の経済文化でありながら、経済行動の原動力となっています。このように本研究室では、中国人の経済文化の視点からみた中国経済の行方を研究し、その研究成果を日本社会に発信しています。

研究の特色

大学院生と日本社会調査

 本研究室では、大学院生を主な対象として、様々な視点から中国経済、文化、社会等諸問題について議論や検討を行い、研究をしています。歴史の研究を通して、今日の中国社会の諸問題の所在を解明し、過去、現在、未来における共通点を明らかにします。中国社会を歴史的に考察することで、社会の歴史的連続性や規律性を究明します。本研究の特色は、1.歴史的文化的背景の重視、2.経済史、金融史研究の重視、3.人文社会の特殊性の重視、4.社会民俗の重視の四点を比較することです。
 中国の歴史は非常に長く、歴史的な要因が人々の経済行為、経済活動に強い影響を及ぼしていると考えられます。つまり中国の経済、社会を研究するためには、中国の社会文化、経済思想、風土文化を研究しなければなりません。
 中国社会は移民による多民族、多人種、多文化により構成された社会であるため、地域の民族性について考える必要があります。また歴史上の様々な要因により、社会文化、経済文化が破壊されることがあります。
 本研究では、そのような歴史的要因に影響されたと思われる中国人の経済思想や経済行動の特殊性を掘り起こしたいと思っています。
 単なる経済データだけでは、中国社会、経済社会、経済発展の要因をはっきり解明することはできません。本研究の目的は、中国の経済データ、経済政策、金融の動き等の真髄を経済文化の視点から正しく分析することです。

研究の魅力

 過去?現在?未来のうち、われわれは、現在の事しかわかりません。しかし、研究者は、過去の歴史を研究し、現在の事を分析し、そして未来を予測することが使命と言えます。日中両国は同文同種とよく言われていますが、実際には、文化の差異が相当存在しています。例を挙げるとすれば、中国社会は、血縁関係を重視する「イエ」社会で、社会のすべて活動の原動力が「イエ」から脱離できず、社会や職場の人間関係は「ヨコ」に平等な関係と言えますが、日本社会は、血縁関係を重視せず、「イエ」より地元を重視し、社会や職場の人間関係は上下服従な「タテ」に平等な関係と言えます。以上のように、文化の視点から中国人の経済行動の内面を分析?解明することは、未来を予測するためにとても大きな意義があり、その点がこの研究の魅力であるといえます。

研究の展望

 私の研究活動の中心である中国の経済?金融史をより活用するために、これから注目される中国経済の行方及び中国人の経済文化を正しく日本社会に伝えたいと思っています。世界のグローバル化が進む中、日中両国は、単に「嫌中」、「嫌日」では何の問題も解決することができません。互いに理解、認識、認知することが不可欠です。鎖国や対立は、過去の話です。我々研究者は、未来のために、歴史?文化?人種?経済の差異を克服して、青少年を的確にグローバル道に導いていこうと思います。

この研究を志望する方へのメッセージ

 日中両国は近隣として、文化の相通性がありますし、相異性もあります。「大同を求め、小異を残す」という方針に基づいて、歴史の視点から日中の経済、文化、歴史を見て、両国の経済に関する知識を共同的に勉強しましょう。特に、学部から大学院に入りたい学生諸君を国籍、人種を問わずに、心より歓迎します。