特定元素周りの原子位置の3次元的可視化
{web_name}先端研究院地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)の石松直樹教授、入舩徹男教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科のZhan Xinhuiさん(博士課程)、中島伸夫准教授、名古屋工業大学物理工学類の木村耕治准教授、林好一教授、広島市立大学情報科学研究科の八方直久准教授などからなる研究チームは、蛍光X線ホログラフィーの高圧下測定に初めて成功しました。
蛍光X線ホログラフィーは特定元素周りの3次元の原子像を再生できる構造解析手法であり、「特徴的な機能を持つ材料は、どの部分がその機能に関わっているのか、を原子レベルで可視化する」という要望に応える実験技術として広く利用されています。しかし、その蛍光X線ホログラフィーは元来微弱なシグナルのためこれまで高圧下の測定が実現していませんでした。
今回、本研究チームは大型放射光施設SPring-8の強力な次世代X線と高圧発生装置、およびナノ多結晶ダイヤモンド(NPD=ヒメダイヤ)を組み合わせた測定システムを構築することで10万気圧以上の高圧下での明瞭なホログラフィー像取得に成功しました。今後、圧力誘起の超伝導観測、微量元素添加による特異的物性素材の探索といった、物質科学?材料科学などへの広い応用が期待されます。 また、この成功は、GRCが開発したNPDの新たな活用例としても重要な成果となりました。
本研究成果は、英国の国際科学雑誌「Journal of Synchrotron Radiation」に7月18日に掲載されました。
研究成果のポイント
?蛍光X線ホログラフィーは特定元素周りの3次元的な原子配置を可視化する構造解析手法。しかし、そのシグナルが微弱なため、高圧下の測定はできていなかった。
?大型放射光施設SPring-8の強力な次世代X線、ダイヤモンドアンビルセルおよびナノ多結晶ダイヤモンド(NPD=ヒメダイヤ)を組み合わせた測定システムを構築して高圧下の測定に初めて成功した。
?NPDからの回折X線をX線吸収フィルターで除去し、SrTiO3単結晶からのホログラフィー像を13.3 GPa(1GPaは約1万気圧)の高圧まで明瞭に観測した。
?常誘電体SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)単結晶試料のSr周りの原子配置と加圧による圧縮過程を可視化した。
?圧力誘起の構造相転移の前駆現象の観測、原子間距離をコントロールした時のドープ元素の挙動など物質科学、材料科学に関わる研究トピックへの応用が期待される。
?多結晶性超硬材料であるNPDの新しい活用例となった。
論文情報
掲載誌:Journal of Synchrotron Radiation
題 名:X-ray Fluorescence Holography under High-Pressure Conditions(高圧環境下での蛍光X線ホログラフィー)
著 者:Xinhui Zhan, Naoki Ishimatsu, Koji Kimura, Naohisa Happo, Halubai Sekhar, Tomoko Sato, Nobuo Nakajima, Naomi Kawamura, Kotaro Higashi, Oki Sekizawa, Hirokazu Kadobayashi, Ritsuko Eguchi, Yoshihiro Kubozono, Hiroo Tajiri, Shinya Hosokawa, Tomohiro Matsushita, Toru Shinmei, Tetsuo Irifune, and Koichi Hayashi
URL: https://doi.org/10.1107/S1600577525005284