プレスリリース

粘土コロイドを用いた高効率光エネルギーアップコンバージョン
光エネルギーの高度利用をめざした有機修飾合成ヘクトライトのグリーン溶媒系可溶化剤としての応用

足球即时比分_365体育直播¥球探网理学部佐藤久子研究員(元理工学研究科 教授)の研究グループは東邦大学医学部山岸晧彦博士(元東京大学大学院理学系研究科?教授)、北里大学理学部瀧本和誉助教、日本大学文理学部吉田純准教授らとの共同研究によって、粘土コロイド中における光アップコンバージョン(TTA-UC)系の構築に成功しました。入射光よりも短波長の発光を起こすエネルギー変換を行うUCには高度に設計された反応系が求められます。 本研究では、エネルギーの高効率化を狙って陽イオン交換性を有する有機修飾合成ヘクトライトに吸着させた高発光性の陽イオン性イリジウム錯体([Ir(bzq)2(phen)]+ (bzqH = benzo[h]quinoline; phen = 1,10-phenanthroline))を用いました。柑橘類に含まれる天然のリモネン溶媒中においても有機修飾合成ヘクトライトにより陽イオン性ドナーを可溶化でき、TTA-UCを実現できたことに大きな意義が認められます。粘土鉱物とリモネン溶媒との相乗効果によって、空気中においてもアクセプターである9,10-diphenylanthracene(DPA)からの高効率のTTA-UCを実現しました。R-リモネンはグリーン溶媒に属する天然物であり、今後は、環境調和型粘土鉱物とグリーン溶媒を用いて、エネルギー高度利用にむけてさらなる効率向上が望まれます。

有機修飾合成ヘクトライト中での R-リモネン溶媒中のD-[Ir(bzq)2(phen)]+ (ドナー)とDPA(アクセプター)を用いたUC発光のイメージ図

ポイント

  • 三重項-三重項消滅による光アップコンバージョン(TTA-UC)は、入射光よりも短波長の発光を起こすエネルギー変換である。TTA-UCは太陽エネルギーの高効率化、生体系のその場検出など幅広い応用が期待される。しかしその一方で、実現には高度に設計された反応系が求められる。
  • 本研究では、グリーン溶媒であるリモネン溶媒中に有機修飾合成ヘクトライトにより高発光性イリジウム錯体を可溶化して、空気下におけるTTA-UCの実現に成功した。その効率は従来報告されている均一溶媒系と比較しても十分に高いものであった。
  • さらに、リモネンがキラル溶媒であることに着目して、キラルイリジウム錯体を用いることにより、TTA-UC量子収率に立体選択性があることを見出した。

論文情報

掲載誌:Applied Clay Sci.
題名:Triplet-triplet annihilation up-conversion of cationic iridium(III) complex solubilized by organically-modified hectorite in a green solvent
著者:Akihiko Yamagishi, Kazuyoshi Takimoto, Risa Ito, Jun Yoshida, Hisako Sato
DOI:10.1016/j.clay.2025.107828
https://doi.org/10.1016/j.clay.2025.107828

本件に関する問い合わせ先

足球即时比分_365体育直播¥球探网理学部 研究員(プロジェクトリーダー) 佐藤 久子