宇宙進化研究センターの松岡良樹准教授が、日本天文学会の研究奨励賞を受賞し、同学会2018年春季年会(千葉大学)会期中の3月15日に授賞式および受賞記念講演が行われました。
今回受賞対象となった研究は、「超大質量ブラックホールの進化に関する観測的研究」です。宇宙には、太陽の百億倍にも達するような質量を持つ巨大なブラックホールがたくさん見つかっています。その進化の過程を明らかにすることは、宇宙進化研究センターの研究目標の柱の1つでもあります。松岡准教授は日本、米国、台湾などの研究者から成る国際共同チームを率いてこの課題に取り組み、これまで多くの成果を挙げてきました。ブラックホール自体は光らないため観測が困難ですが、周りの物質が飲み込まれるときに強烈な光を放つことが知られており、その光は「クエーサー」と呼ばれる天体として観測されます。松岡准教授は、近傍から最遠方まであらゆる宇宙を舞台として、このクエーサーの光を手がかりに巨大ブラックホールの研究を進めています。
そのうち近傍宇宙では、クエーサーを宿す「母銀河」に着目した最先端の研究を行なっています。すばる望遠鏡の広視野カメラに、特定の狭い波長の光のみを通す特殊なフィルターを装着して観測を行い、クエーサー母銀河全体に渡る巨大なプラズマ領域の発見に成功しています。また米国が中心となって行われたSloan Digital Sky Surveyと呼ばれる探査観測のデータを活用し、母銀河が太陽質量の1000億倍にも達するほどの多量の星を抱える大質量銀河であること、それらの星は10億年ほど前に爆発的星形成によって生まれたらしいことなどを突き止めました。これらの結果は、現在の宇宙物理学の最大の謎の1つとされる「巨大ブラックホールと銀河の共進化」の解明に向けた重要な手がかりとなっています。
松岡准教授は一方で、最遠方宇宙における巨大ブラックホールの探索にも取り組んでいます。すばる望遠鏡の最新の広視野カメラによる探査観測データを用いて2014年頃に開始されたSHELLQsという国際共同プロジェクトでは、地球から130億光年を超えるような遙か遠い宇宙において、これまでに70天体近くの巨大ブラックホールを発見しています。これらの天体は現在、最遠方宇宙において人類の知る巨大ブラックホールの半数近くを占めています。またSHELLQsの発見天体は、従来知られているものに比べて10-100倍もクエーサー光度が暗く、より普遍的な巨大ブラッックホールを捉えていると考えられます。
今後は、すばる望遠鏡の新分光装置、東京大学アタカマ天文台望遠鏡、30m望遠鏡など、次々と登場してくる新世代の観測設備群を駆使しながら、巨大ブラックホールの進化についてさらに解明を進めていくことが松岡准教授の目標です。またその中で、本学の大学院生にも最先端の研究に触れてもらい、国際社会で活躍できる優れた人材の育成にも貢献していきたい、と抱負を語っています。
なお本研究に関する紹介記事が、本学ホームページの最先端研究紹介 Infinity に掲載されています。
/data_study/data_study-55578/
<宇宙進化研究センター>