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大学院理工学研究科環境機能科学専攻の佐藤久子教授らの研究が日本化学会の速報紙Chemistry Letters のEditor’s Choice論文に選出されました【2月28日(火)】

 大学院理工学研究科環境機能科学専攻の佐藤久子教授と横浜国立大学川村出准教授、東邦大学医学部との共同研究「固体VCD法を用いた2つののキラル部位をもつイソロイシンの構造解析」が、日本化学会の速報紙Chemistry Letters 46巻 4号のEditor’s Choice論文に選出されました。

 DNAやたんぱく質など不斉を有する生体分子(キラル分子)は自然界に多く存在し、それらが集合してつくる超分子の高次キラル構造(DNAの二重らせんや酵素分子内の不斉空間など)は、生体機能発現のための不可欠な要素であり、これら不斉高次構造レベルにおける構造変化や変異は、生命活動の異常性を示すシグナルとして、疾病(アルツハイマー病における神経変性など)の重要な兆候となっています。また、現在、細胞中の種々の微小器官中に存在すると考えられている加齢?ストレス等によって生じたD-アミノ酸の由来は、未だ明らかになっておらず、このように、タンパク質中のD-アミノ酸を直接検出することは、社会から望まれている状況にあり、大きな注目を集めています。
 佐藤教授らは、高感度化をめざした振動円二色性分光法と表面反射とのVCD-RASコンカレント測定装置の開発を行ってきました。その結果、VCD-RAS手法が、溶液、膜、ゲルあるいは固体試料に見られる分子集合体の示す超分子キラリティ解析に対して、新しい手段となり得ることが示されました。
 これらの研究を発展させ、ペプチドオリゴマー中のD-アミノ酸の分析手法の開発を目指しています。そのための第一歩として、横浜国立大学川村准教授や東邦大学医学部との共同研究で、アミノ酸のキラリティ分析に対する固体VCD法の有効性を検討しました。試料としては、抗菌作用のあるペプチドをとりあげ、その中に存在することが知られているD-アロイソロイシンに着目しました。その結果、固体状態での測定によって2つの不斉炭素に由来するVCD吸収の符号がそれぞれ独立には決まらず、両者のキラリテイに相互依存していることがわかりました。これはペプチド中のアミノ酸のRSを同定する上で、着目する分子のVCD吸収の符号に対して隣接したアミノ酸のキラリティが影響を与える可能性があるという新しい知見を与えることができました。
 この成果により、日本化学会の速報紙Chemistry Letters のEditor’s Choice論文に選出されました。

Chemistry Letters

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