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理工学研究科 佐藤久子研究室の論文が Royal Society Chemistry の学術雑誌 Back cover に掲載

Royal Society Chemistry(イギリス化学会)の学術雑誌Chemical Communication誌のBack cover に”Showcasing research from Hisako Sato’s labs at Ehime University, Japan” として以下の論文が掲載されました。

論文名:Molecular origin for helical winding of fibrils formed by perfluorinated gelators(パーフルオロゲル化剤によるゲル繊維におけるらせん形成の分子機構)
 ゲル化は液体を固体化するための有効な方法であり、食品や薬品など様々な分野で広く応用されている。ゲルでは、フィブリールと呼ばれる網目状の繊維のつくる空孔中に液体が取り込まれ見かけの固体状態が保持されている。フィブリールをつくる物質はゲル化剤と呼ばれ高分子と低分子量のものがある。両者とも広く実用化されているにもかかわらず、どのような物質がゲル化剤となりうるかを前もって知ることは未だできていない。これはひとつには、フィブリールがどのような分子構造を有しているかをあきらかにすることが非常に困難なためである。3次元的な不規則構造のために、X線構造解析法などの方法が適用されない。  
 そこで本研究では、この問題の解決のために赤外領域の振動円2色性分光法(VCD)を用いることを提唱した。この分光法は、液体や不規則構造中のキラル分子の立体構造を明らかにするのに大きな力を発揮する。分子の立体構造が正確にわかれば、それをモデル的につなげることによってフィブリールの分子構造が自然と導かれるのではないか?このような予測のもとに、新規にパーフルオロ基をもつキラルな低分子量ゲル化剤を合成し、この分子がフィブリール中でとる立体構造を明らかにした。分子連結のモデル化においては、特に分子のキラリティとフィブリールのらせんの向きとの関係を再現することをめざした。得られた結果は具体的には以下のようなものである:(1)ゲルにすることによって、VCDシグナルが増大する(2)紫外可視部に吸収をもたないパーフルオロ基のヘリックスも観察できる。(3)ゲル化剤分子を連結させることによって、フィブリールのらせん構造のなりたちを示すモデルを提出することができた。

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掲載された学術雑誌RoyalSocietyChemistryのBackcover

 

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