平成23年度科学研究費補助金に採択された理工学研究科 堀 弘幸教授からメッセージをいただきました。
科学研究費補助金 基盤研究(B) 平成23年度採択
RNA成熟マシナリーの構造的基盤と機能進化
理工学研究科 教授 堀 弘幸
生命の遺伝情報はDNA(遺伝子)に書き込まれており、RNAを介して、タンパク質へと変換されます。よって、生命を理解する上では、DNA(遺伝子)やタンパク質の研究と同様に、RNAの研究もまた重要です。RNAは、様々な編集加工の工程を経て、成熟RNAとなり、初めて生理機能を発揮するようになります。すなわち、RNAは切断され、繋ぎかえられ、様々な官能基(メチル基やアセチル基など)が付加され、場合によってはタンパク質との複合体が形成されます。これが、RNA成熟です。
RNA成熟という現象自体は、遺伝情報発現の基本原理が解明された時点(1980年ごろ)で、すでに知られていました。しかしながら、RNA成熟にどのような遺伝子産物(タンパク質やRNA)が関わっており、いかなる分子装置が作用するのかは、長らく未解明でした。契機は、21世紀に入って、ヒトをはじめ、様々な生物のゲノム情報が解明されることによって訪れました。事実、私自身も、幾つかの新規遺伝子を発見することができました。ある程度、RNA成熟に関わる遺伝子産物群が判ってくると、これらは細胞内でネットワークを形成し、互いに制御しあっていることも発見できました。また、生物種によって、非常に多様性があることも判ってきました。さらに、RNA成熟が様々なヒトの遺伝病の原因になっていることや、ウイルス、微生物の感染に関係することも判ってきました。
本研究では、これまでの研究成果を踏まえ、個々のタンパク質やRNAの研究と並行し、RNA成熟ネットワークの全体像を包括的に議論していく計画です。以上が、申請課題の中身です。
それはさておき、「若手研究者に対するメッセージ」もお願いしますという依頼には、いささか当惑しています。私自身、分子生物学?生化学の先達から見れば、駆け出しのひよっこだと思っていますし、研究にトライする姿勢ぐらいは若くあり続けたいとも願っています。で、何かを語らねばならないとすると、ともかく研究を続けること、これが唯一のアドバイスでしょうか?研究費の申請、当たろうがはずれようが、授業や管理運営で忙しかろうが暇だろうが、ともかく研究を続ける。ついで、その成果を発表する。自分が良いと思うジャーナルへ論文を送る。論文が通れば素直に喜べばよいし、通らないならば何故かを考える。そして、研究を続ける。これだけです。
だって、研究をやっていないで研究者とは言えないでしょ?