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理工学研究科の長尾透助教が日本天文学会研究奨励賞を受賞

 このたび、理工学研究科数理物質科学専攻の長尾透助教に日本天文学会から研究奨励賞が授与されることが決まりました。長尾助教は本学宇宙進化研究センターの兼任教員も務めながら、宇宙物理学分野の研究を進めています。

 今回受賞対象となった研究は「宇宙化学進化の観測的研究」です。長尾助教は主にイタリアの研究グループとの国際共同研究により、銀河の重元素量を測定する診断方法の研究を行ってきました。この研究を踏まえ、欧州南天天文台がチリ共和国に設置しているVery Large Telescopeという望遠鏡を用いて遠方宇宙における銀河の重元素量測定を系統的に進めてきました。この結果、約100億年前の宇宙において大質量銀河が活発な化学進化を遂げていたことを突き止めました。

 また、長尾助教はカリフォルニア大学などとの国際共同研究により、国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡を使って遠方銀河を調査し、化学進化の最初期段階に存在したと考えられている「第一世代天体」の探査も世界に先駆けて進めてきています。ビッグバンの際に作られた水素とヘリウムだけから作られ、それ以外の元素を含まない第一世代天体の性質については理論的には盛んに研究されてきていますが、観測的には未だ発見されていません。長尾助教らによる一連の観測では第一世代天体の発見には至りませんでしたが、見つからなかったという事実から第一世代天体が持つべき性質に対して制限を与え、理論研究に示唆を与える結果を得ています。

 さらに、長尾助教は遠方宇宙に存在する巨大ブラックホール天体に着目した宇宙化学進化の研究も上記の研究と平行して進めてきています。巨大ブラックホール天体はその莫大な重力エネルギーのおかげで銀河よりもはるかに明るく輝くため、遠方宇宙(昔の宇宙)における化学進化を研究するためのターゲットとしては便利な存在です。この研究により、遠方宇宙における巨大ブラックホール天体の周辺部では化学進化は宇宙開闢後わずか十数億年程度の間に急速に進行したことが分かりました。なお、この研究に参加した本学理工学研究科の大学院生である松岡健太さんが、平成22年度の日本学術振興会特別研究員に採用されています。

 今後は、より暗い巨大ブラックホール天体に研究を拡張させるために、本学宇宙進化研究センターの教員と大学院生および国内外の研究者との議論を重ねながら大規模な巨大ブラックホール探査プロジェクトを推進していくことが長尾助教の課題です。本研究を軸として最先端研究と大学院教育の両方に貢献していきたい、と長尾助教は抱負を語っています。

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2009年8月にブラジルのリオデジャネイロで行われた国際天文学連合総会において、シンポジウムで招待講演を行う長尾助教

 

<理学部>