地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)土屋卓久教授と、上級研究員センター土屋旬上級研究員は、第一原理電子状態計算法を駆使し、地球の中心をはるかに超える圧力で生じるSiO2の新たな相転移を発見しました。
近年太陽系外で発見されている惑星(系外惑星)の中に、地球と同様な岩石からできているが質量はその数倍に達する、「スーパーアース」の存在が次々と明らかにされています。本研究はスーパーアース深部において、SiO2の新しい高圧相が主要な役割を果たすことを示したもので、スーパーアース内部の構造?ダイナミクスや進化に対しても重要な制約を与えるものです。
本研究成果は、アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)の2011年1月5日の電子版に掲載されるとともに、平成23年1月4日(火)には、愛媛県庁内の番町記者クラブにおいて、土屋教授による記者発表を行いました。
地球中心圧力を超える数100万気圧(マルチメガバール)の圧力領域での地球惑星物質の安定性は、これまでほとんど研究されていませんでした。地球型の岩石惑星の化学成分として最も多量に存在するのが「二酸化ケイ素(SiO2、シリカ)」です。その高温高圧状態での振る舞いを理解することは、地球や惑星の内部の構造や運動の様子を解明する第一歩となります。近年、観測技術の進歩に伴い、宇宙には私たちの太陽系以外にも500個もの惑星の存在が確認されており、そのいくつかは地球と同様の岩石惑星であることがわかってきました。これらは「スーパーアース(スーパー地球)」と呼ばれ、現在、内部構造の他にも、地質活動、表層環境、生命居住可能性(ハビタビリティ―)など、大きく注目されています。
GRCの研究グループでは、これまで「第一原理電子状態計算法」に基づく理論鉱物物性研究から、地球マントル最深部の主要鉱物である珪酸塩ペロヴスカイト?ポストペロヴスカイトの安定性やスピン状態、核-マントル境界の温度構造などを明らかにしてきました。本研究ではさらに地球中心(365万気圧)を大きく超える圧力範囲にまで対象を広げ、スーパーアースの内部を構成する未知の物質の探索を行いました。
この結果、SiO2の最高圧相としてこれまで知られていた「二硫化鉄(FeS2)型相」が、約600万気圧でこれまで全く予想されていなかった「リン化二鉄(Fe2P)型相」と呼ばれる別の構造に「相転移」することを、世界で初めて発見しました。さらにこの発見に基づき、地球下部マントルの代表物質である「MgSiO3(マグネシウム?ケイ酸塩ペロヴスカイト)」や「CaSiO3(カルシウム?ケイ酸塩ペロヴスカイト)」といった鉱物の安定性についても調べたところ、それぞれ約1000万気圧、約600万気圧でSiO2+MgO、SiO2+CaOに分解することが見出されました。
今回発見されたリン化二鉄型SiO2がスーパーアースのマントルや土星や天王星、海王星など巨大惑星の岩石核を構成する主要物質であることが解明されたほか、スーパーアースのマントルには地球の下部マントルに当たる領域の下にさらに3つの異なる層が存在すると考えられることがわかりました。内部構造の詳細がわかってきたことで、今後、スーパーアース内部の運動や進化の様子、例えば地球のようにプレートテクトニクスが存在するのか、大規模なマントル対流が存在するのかなどの研究が大きく進展すると期待されます。
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