平成23年1月11日(火)、冤罪事件(足利事件)の当事者である菅家利和さん及び菅家さんの再審事件で弁護を務めた泉澤章弁護士をお招きして特別講演を開催しました。
今回の講演は、法文学部総合政策学科の開講科目「紛争と裁判Ⅱ」の一環として開催されたもので、会場となった南加記念ホールには、同科目の受講生のほか、多くの学生や教職員、一般市民の方々が集まりました。
まず始めに、「当事者が語る冤罪事件の実態」と題して、法文学部 小佐井良太准教授が菅家さんにインタビューする形式での講演が行なわれました。
講演では、1991年12月に栃木県警の捜査員が菅家さんのもとに訪れるところから、警察での厳しい取り調べ、DNA鑑定の結果及び自白に基づく逮捕、裁判、刑務所での生活、2009年6月に突然釈放され、2010年3月に再審無罪判決が確定するまでの様子を、その時々の心理状況とともに生々しく語られました。その中でも、味方であるはずの弁護士にも疑われたことによる絶望感、服役中に無罪を信じて手紙を送ってくれた支援者への感謝、そして冤罪に追い込んだ警察、検察及び裁判所への怒りが印象的でした。
続いて、泉澤弁護士からは、「足利事件における弁護士の役割と刑事裁判のあり方」と題し、誤判に至った原因を大きく「DNA鑑定の誤り」と「虚偽自白の存在」の二つに分け、それぞれの経過とそこにはらむ危険性についてわかりやすく講演していただきました。そして、足利事件の悲劇を繰り返さないための方策として、捜査過程の全面可視化や物証の第三者機関による科学的な検証などを挙げられました。また、裁判員制度をふまえ、我々一般市民も、冷静な目でもって捜査や裁判を見る必要があることや、人権意識を高く持つこと、そして裁判には推定無罪の原則があることについても言及されました。
最後に行なわれた質疑応答では、一般市民の方から、警察や検察に対する今の気持ちや死刑制度に対する意見などについて質問がありました。また、法律を学んでいる学生に対して望むことは、という質問に対しては、法曹界を目指す学生には、しっかり勉強するのはもちろんだが、人や事実を見る目を養い、事件の当事者の気持ちを理解できるようになって欲しいと答えられました。
菅家さんは、今後も各地で講演され、同じように冤罪事件で苦しんでいる人たちの支援をしていかれる予定です。
<広報室>