平成24年12月3日(月)?6日(木)、農学部環境産業応用化学の逸見彰男教授(大学院連合農学研究科長)が、中華人民共和国広東省の広州市農業科学研究院から招かれ、「人工ゼオライト」について特別講演と技術指導を行いました。
「人工ゼオライト」(中国では「人造沸石」と表現)は、逸見教授のグループが、土壌の有用な働きを現す機能性ケイ酸アルミニウム系物質である「イモゴライト」(無機ナノチューブ)や「アロフェン」(無機ナノボール)の基礎研究成果を基に、これらの物質と類似組成の電力副産物「石炭灰」から合成する方法を世界で初めて発見し、大量生産技術と商用大型製造プラントを開発、実用化したリサイクル型の多機能性新素材です。
逸見教授は、広州市の同研究院で、研究者や技術者を対象に、人工ゼオライト及びその農業的利用技術に関する特別講演と現地での技術指導を行いました。また、広州市の東北約250kmに位置する工業地帯の詔関市の製鉄所で、製鉄や製鋼工程の副産物有効利用について、「人工ゼオライト」技術に関する指導や同技術の事業化とビジネスモデル構築に関して、講演を行いました。
中国は、経済分野での進展が著しく、現在世界第2位の国内総生産(GDP)が、2020年までに100兆元(16兆ドル)に達し、第1位のアメリカに肩を並べる見通しといわれています。エネルギーの多くを石炭火力発電に頼っており、副産物として大量の石炭灰を排出しているため、研究者、技術者や事業家たちは、本学で開発した「人工ゼオライト」の技術に大変興味を示していました。
「人工ゼオライト」は、経済産業省により日本工業規格(JIS)が制定されており、日本では、循環型の低炭素社会形成やゼロエミッション(廃棄物を排出しない)達成の意識が広まっていることから、環境志向型新素材として社会で普及しています。中国での展開を足がかりに、新しい環境技術として世界的規模でのさらなる浸透が見込まれます。
<農学部>