平成25年3月末退職の農学部技術室 尾上 清利 技術専門員から大学での思い出を寄せていただきました。
昭和55年1月1日付けで米野の演習林作業員として配属され、演習林の管理運営は勿論、『演習林実習』、『森林測量学』、『樹木学』等、今日も続いている公開講座『森の達人』、『視覚障害者対応 森林体験講座』等の補助を行うと共に、『演習林スギ立木幹材積表の調整』『演習林気象データ解析システムについて』『高精度自記デンドロメータによる樹木の直径成長測定』などの報告もした。また、演習林気象データの管理と共に『附属演習林気象データ?附属演習林東野試験地気象データ』を長期間演習林報告に発表を行った。
平成10年7月1日付けで附属演習林分室及び附属演習林東野試験地に配属され、教育研究用データの収集、実験実習用種苗の育成等の職務に配置換えになった。このころ、着任された鶴見武道先生と間伐材の切り捨てによる災害の防止のため、間伐木材をハウス暖房の燃料として用いることで、ハウス農家の暖房をバイオマスボイラに変換したいと開発を試みた。その頃『知財研修セミナー』の研修後であり、特許申請書を作成し、特許証を平成15年に取得することができた。
その後、兵庫県の丹南建設株式会社さんより共同研究の問い合わせがあり、平成20?21年 と『木質バイオマス暖房装置の開発』の共同研究を実施した。平成20年にJSTの『シーズ発掘試験』への応募で「環境を考慮したビニールハウス無煙暖房装置の技術開発」で補助金を得ることができた。引き続き、翌年の平成21年には『つなぐしくみ』で多額の補助金を取得し研究を一段と進めることができた。
また、昨年4月より岩手県釜石市の石村工業株式会社より12月末までの共同研究と、被災地等復興支援事業の共同申請を行なった。それまでの研究で、木材の燃焼時に排出されるガスの除去に白金触媒を用いていたが、この触媒は安価な燃焼炉に対し高価であった。そこで逸見彰男教授に炭酸ガスの除去にゼオライト触媒を利用できないか相談し、ハイシリカの含まれているもみ殻灰の実験から,今日まで大量生産されていないハイシリカゼオライトのZSM?11や高価なZSM?5が80%以上含有していることが明らかになった。この実験結果をJST本部で発表したことで、日本工業新聞、日経産業新聞等大手新聞社から取材された。また、木質炭化学会の第9回木質炭化学会研究発表会において『優秀発表賞』をいただくことができた。このハイシリカゼオライト生産を中国黒竜江省で作成したいと、問い合わせがあり一昨年8月に逸見教授に無理なお願いをし、黒竜江省北東部の富錦へ同行頂き、現在も前向きに進んでいる。それと共に、タイ、ベトナムにおいてもこのプロジェクトは進行している。しかしながら、本年をもって退職することで今後の成り行きが心配である。
昨年末、石村工業株式会社と共同開発を行っていたハウス暖房装置が『CLOUD STOVE』として商品化された。今後、この商品が皆様のお役に立つことを心から願っている。