平成25年3月末退職の医学部経営管理課 瀬尾 哲男 副課長から大学での思い出を寄せていただきました。
1年間に1億5千万円値引きさせる職場
教育学部の総務から医学部経営管理課に異動したのは3年前である。定年退職まで残り3年の時点であった。
一ヶ月位経つと「価格交渉に参加してください。」と声がかかった。何の準備もなく会議室に行くと会場には医療コンサルタント業者がいて「ショウカン価格の○%の値引きをお願いします。」と言っているではないか。「ショウカン?」後で担当者に聞いてみると、患者に使用するカテーテルや人工骨?埋め込み式ペースメーカーなどは「医療材料」と呼ばれ、「償還価格」が厚労省によって設定されており、病院がそれらを患者に使用すると償還価格分を保険請求できると云うことであった。償還価格よりも安く購入すれば差額分は病院の「儲け」と云うことになるのだそうだ。(ちなみに医薬品は「薬価」と云う。)
足球即时比分_365体育直播¥球探网病院の1年間の医療材料の購入額は約30億円。医薬品も30億円の合計60億円である。60億円という金額は愛大病院の本館が一棟建つ金額である。仮に1%だと年間6千万円の節減になる計算。
足球即时比分_365体育直播¥球探网では38年の勤続年数だが病院は初心者。これまた初心者の調達第2チームの若手と試行錯誤をしながら必死になって価格交渉を行った。医療コンサルタント会社(莫大なお金が動く世界ですのでこんな会社もあるのです。)の力も借りながら初年度は医療材料で6千万円、医薬品で4千万円の値引きを獲得することが出来た。2年目は医療材料で4千万円、医薬品で6千万円の値引き。そして今年度は医療材料で7千万円、医薬品で6千万円の値引きを獲得できることとなった。また、外注検査でも年間4千万円の減額を実現した。医薬品の使用方法の改善でも年間4千万円の節減をおこなった。これらの節減は契約額の減額であるので契約が続く限り有効である。1年間だけで終わるものではないので今後ずっと引き継がれるものである。この3年間の累計額は8億円の減額と推定される。
このように大きな仕事が出来る重要な職場であるが実は悩みがある。若手が育たないのである。
病院の業務は医師や看護師、薬剤師など高度な専門性を持つ職種と対話をする必要がある。生半可な知識では相手にもしてくれない。たすき掛け人事で他の部署からやってきた若手は契約の知識もなければ医療についての知識も皆無である。仕方がないことである。
異動1年目はなにも分からずに仕事を見よう見まねでおこなうだけ。(コピーのような仕事をするから、ときどき昨年と同じワープロの間違いが決裁で回ってくることがある。)3年目になると年度末に異動の内示を期待してソワソワしてくる。「今度異動すると思いますので引き継ぎをおこないます。」(まだ現在の仕事も十分理解してないのに引き継ぎが出来るのかよ。?心の声)これでは腰を据えた業務は期待できない。仮に、優秀な職員に「もう少し病院にいて欲しい。」などと言おうものなら、それはいじめと取られかねない状況である。聞けば国家公務員は「本省手当」が月平均で2万円あるそうな。地方に較べて本省勤務は大変だから、という理由だそうだが、それならば医学部も医事課など大変な職場は数多くある。「病院業務調整手当」などは考えられないだろうか。
恒常的な残業。膨大な量の業務。毎日の残業は当たり前、専門性の高い職種との折衝など困難な問題は山積みである。現状ではなかなかモチベーションがあがらない。頑張っても頑張らなくても待遇に変わりがないのであれば誰でもそうなるのは非難できない。
法人化で国家公務員の縛りから離れたが、それは同時に足球即时比分_365体育直播¥球探网独自で生き抜かなければならないことを意味している。大学独自で各種規則を決めたが、その制定の意味などを職員に丁寧に説明し理解を求めるなどの研修があまりなされていないのも危惧している。
「待遇改善と職員研修の充実」が大切であると考える。わたしはこのたび定年を迎え、将来のことは後年に託す身であるが、足球即时比分_365体育直播¥球探网の今後の発展を祈念する。