お知らせ

医学部附属病院の教員らが肝がんラジオ波治療におけるシミュレーターシステムを開発しました

 このたび、本大学医学部附属病院第三内科の廣岡昌史講師らが、日立アロカメディカル株式会社と共同で、これまで肝がんの根治手術として広く行われてきたラジオ波治療(※1)において、極めて有効なシミュレーションシステムを開発しました。このシステムは、当院の倫理委員会で承認されて以降、19例の施術で利用し、全ての施術で治療に成功しています。

 block_63295_01_mこれまでのラジオ波治療では、通常、1本の針を腫瘍に刺し焼灼を行っていましたが、昨年からバイポーラシステム(※2)が登場し、広い範囲を効率よく焼灼できるようになりました。ただし、その際、腫瘍の周りに複数の針をバランス良く配置することは難しく、高度な技術を要します。また、従来のCT撮影による確認方法では、不要な放射線被曝が課題となっていました。
 このシミュレーションシステムにより、超音波と磁場発生装置(RVS)を用いて穿刺針を3次元表示させることで、容易にバランス良く針を刺すことができ、腫瘍の焼灼が行えるようになりました。また、本システムでは、超音波を利用するため、放射線被曝がないまま治療を完遂することが可能となります。  

 当院は、バイポーラシステムによる治療症例数が全国でもトップクラスの施設であり、今後も引き続き、このシステムを活用し、より正確で安全かつ患者さんに優しい肝がんの治療に取り組んでいきます。

◆肝がんは、国内外で多数の死亡者が存在し世界中で重要視されている疾患です。日本でも、年間約3万人の方が亡くなっており、愛媛県は肝がん年齢調整死亡率が47都道府県で最も高い状況となっています。このシミュレーションシステムが普及することで、肝がんの治療が容易に行えるようになり、愛媛県の置かれている現状を改善し、全国の死亡率の低下に繋がることを期待しています。

【用語解説】
※1 ラジオ波治療とは…
 肝臓がんを死滅させるために行なわれる治療のこと。ラジオ波とは、AMラジオなどの周波数に近い周波数約450キロヘルツの高周波のことで、他の医療機器(電気メスなど)に使用される高周波と同じもの。
 腫瘍の中に直径1.5ミリの電極針を挿入し、ラジオ波電流を流すことにより、電極周囲に発生させた熱によって病変を固める。固まった細胞は、細胞の機能が失われているために、間もなく死滅する。1995年頃から欧米で開発され、日本では1999年頃から広く臨床使用されており、2004年4月には、日本でも保険適用手術として認められ、肝細胞癌に対する標準的な治療として位置づけられている。

※2 バイポーラシステムとは…
 従来のモノポーラー型治療システムとは異なり、針の先端に絶縁部を挟んで2個の電極が存在し、電流がこの2つの電極の中で灌流することによって、効率的かつ低侵襲による方法で、患者のがんを焼灼することができるシステム。

<医学部>