地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)の境毅助教、八木健彦客員教授、大藤弘明准教授、入舩徹男教授らの論文が、米国物理学協会(American Institute of Physics、 AIP)が発行する専門誌Review of Scientific Instrumentsの編集部が選考するEditor’s Picks論文に選出されました。
?AIPは、米国を中心とした物理科学系学会の連合体で、約13万人の会員を擁しています。AIPが発行する雑誌の一つであるRev. Sci. Instrum.は、物理科学分野全般の新しい研究手法や実験装置に関する研究成果が発表される著名な科学専門誌です。この雑誌に発表される年間約1000編の研究論文のうち、特に注目すべき論文として、年間30編程度の論文がEditor’s Picksとして選出されます。今回、2015年1月?3月期に発表された論文のうち、境助教らの論文を含む5編の論文が、該当論文としてAIP出版から発表されました。
境助教らは、GRCで開発されたナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)や単結晶ダイヤモンドを、最新の集束イオンビーム(FIB)加工装置を用いて、数十ミクロン程度の超小型アンビル(マイクロアンビル)に加工しました。これを用いて「2段加圧式ダイヤモンドアンビル装置」を開発し、300万気圧を越える超高圧力を高い再現性で発生させることに成功しました。地球の中心部の圧力は約360万気圧であり、ほぼこれに対応する圧力が達成できたことになります。
今後、境助教らは、この手法やヒメダイヤの改良により、1000万気圧領域の発生も目指しています。
なお、今回の「マイクロアンビル」の加工には、企業(日立ハイテクノロジー)のFIBが利用されましたが、この3月末に最先端のFIBがGRCに導入されました。FIBの高圧地球科学への応用は、GRCの入舩教授?一色麻衣子博士課程学生(現九州大准教授)らにより世界で初めて試みられ(Irifune et al.、 Earth Planet. Sci. Lett.、 2004)、現在では多くの研究室で超高圧合成試料の透過電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製に利用されています。
今回、GRCに導入されたFIBの多様な微細加工への応用により、更に高度な超高圧発生技術の発展が期待されます。
対象論文
Sakai, T., Yagi, T., Ohfuji, H., Irifune, T., et al., High-pressure generation using double stage micro-paired diamond anvils shaped by focused ion beam, Rev. Sci. Instrum., 86, 033905, doi: 10.1063/1.4914844, 2015.