プレスリリース

「成長」優先から脱した、持続可能な食農システム構築への新たな提言

京都から発信する地球規模の環境、経済、社会問題解決に向けた青写真

概要

人間の活動による地球温暖化など異常気象、環境破壊、大量消費、南北格差など環境、経済、社会の数々の問題を解消し、持続可能な暮らしを実現するため、総合地球科学研究所(地球研)は多様な研究を進めています。食と農の新たなシステムの再構築も不可欠として、各地での地元の人々と協働した実践を含め、多くの研究に取り組んできました。2021年までの5年間、超学際的な研究手法で、ポスト成長社会に適した小規模な食農システムの提案、未来の食のあり方を生産者や研究者、政策決定者が話し合うネットワーク構築などを行った「FEASTプロジェクト」などはその代表的な取り組みの一つです。

こうした取り組みを背景に、FEASTプロジェクトを中心とした研究チームは、経済成長優先で、搾取などによって格差を助長するなど、人間にもやさしくなく、生態系をむしばむ現在の食農システムは持続可能ではないとして、新たな食農システムのモデルを提案し、「Nature Sustainability」(2022年8月4日号)に研究論文(Perspective論文)として発表しました。「『ポスト成長社会』のための持続可能な食農システム」と題したもので、学際的な研究を進める32人の研究者が、2021年に地球研で開催された国際ジンポジウムで研究成果を発表?議論し、未来の持続可能な食農システムのあり方に関する斬新な見解をまとめた課題設定(解決)型論文です。当プロジェクトの食農システム構築に関する研究の集大成で、世界の政策決定者、アグリビジネスや食品企業、生産者、消費者、流通業者、研究者などに向け改革を迫る、画期的な食農システムの青写真となっています。

研究の目的

現在の世界の食農システムは、経済成長に固執するあまり、人間や動物を搾取し、生態系をむしばみ、化石燃料に依存し、農作物生産から食卓に上る食品まで少数の多国籍企業に支配されている側面があります。それは貧困格差、環境破壊など多くの犠牲の上に成り立ち、「不適切な食品」が大量に生産され、流通しているのが現状です。こうしたシステムは、決して持続可能ではありません。新たな持続可能な食農システム構築の必要性を世界に向け発信し、成長主導型の食農システムの見直しに向け、議論のたたき台にすることを目指しています。

論文情報

雑誌名:Nature Sustainability, 2022年8月4日 
オンライン版:URL:https://www.nature.com/articles/s41893-022-00933-5
DOI:10.1038/s41893-022-00933-5.
論文題目:Sustainable Agrifood Systems for a Post-Growth World
日本語訳:「ポスト成長社会」のための持続可能な食農システム
論文著者: ?共同筆頭著者
?スティーブン?マックグリービー(Steven R. McGreevy トゥウェンテ大学, 総合地球環境学研究所 兼任)
?クリストフ?ルプレヒト(Christoph D. D. Rupprecht 足球即时比分_365体育直播¥球探网)
?ダニエル?ナイルズ(Daniel Niles 総合地球環境学研究所)
?アルニム?ウィーク(Arnim Wiek アリゾナ州立大)

マックグリービーら筆頭著者は、総合地球環境学研究所(地球研)のFEASTプロジェクト(2016-2020年度)のリーダーであり、本論文の著者チームは、2021年地球研国際シンポジウム「Transitioning Cultures of Everyday Food Consumption and Production: Stories from a Post-growth Future(日々の食の消費と生産の文化を変える:ポスト成長期の未来からの物語)」の際に、FEASTプロジェクトの研究メンバーを中心に結成された。
そのほかの共同著者は以下のとおり。
Michael Carolan, Giorgos Kallis, Kanang Kantamaturapoj, Astrid Mangnus, Petr Jehli?ka, Oliver Taherzadeh, Marlyne Sahakian, Ilan Chabay, Ashley Colby, Jose Luis Vivero Pol, Rajat Chaudhuri, Maximilian Spiegelberg, Mai Kobayashi, Bálint Balázs, Kazuaki Tsuchiya, Clara Nicholls, Keiko Tanaka, Joost Vervoort, Motoki Akitsu, Hein Mallee, Kazuhiko Ota, Rika Shinkai, Ashlesha Khadse, Norie Tamura, Ken-ichi Abe, Miguel Altieri, Yo-Ichiro Sato, Masashi Tachikawa (32名)

本件に関する問い合わせ先

総合地球環境学研究所(地球研) 広報室 岡田、中大路
Email: kikaku[at]chikyu.ac.jp *[at]を@に変更して下さい。
Tel: 075-707-2450/070-2179-2130

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