理工学研究科の堀教授らが、東京大学?医科学研究所と連携し、葉酸依存性RNAメチル化酵素の構造?機能解析に成功し、新規な触媒機構を提案しました。この研究成果は、米国科学アカデミー紀要 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 電子版に2009年5月4日付で掲載されました。
メチル化は、DNA、RNA、タンパク質、脂質、神経伝達物質などに起こる、生体内で、もっとも基本的な修飾反応のひとつです。メチル化された生体分子は遺伝情報の発現を制御し、細胞の分化、発生、ガン化、神経伝達、感染、受精、遺伝、免疫など様々な高次生命現象に関わります。とくに、RNAはメチル化の頻度の高い生体高分子です。
これまで、RNAのメチル化では、S-アデノシル?メチオニンという物質からメチル基転移する反応のみが知られていましたが、2005年、ビタミンの一種?葉酸からメチル基転移する酵素の遺伝子が同定されました。
この葉酸依存性RNAメチル化酵素(TrmFO)は、その立体構造が不明で、どのように葉酸からRNAへメチル基を転移するのか、まったく判っていませんでした。そこで、理工学研究科の堀 弘幸 教授、平田 章 助教、大学院生の山下 光輝さん、岩下 知香子さんのグループは、東京大学?医科学研究所の濡木 理 教授、石谷 隆一郎 准教授、西増 弘志 助教と共同で、構造?機能解析に着手しました。足球即时比分_365体育直播¥球探网のグループは、アミノ酸のセリンを初発物質とする二段階酵素活性測定法を開発し、これまで誰も出来なかった定量的な機能解析への道を拓きました(図1)。この成果をもとに生化学的解析を進め、東京大学のグループが行ったX線結晶構造解析の結果(図2)と照らし合わせ、葉酸依存性RNAメチル化酵素が、葉酸から直接、RNAの塩基にメチル基を転移することが判りました。
葉酸依存性RNAメチル化酵素は広くバクテリアに分布しており、この研究成果は生命進化に新知見を与えるだけでなく、感染症対策を視野に入れた抗菌剤開発へとつながる可能性も秘めています。