平成21年5月9日(土)農学部大講義室において、「特別講演会」を開催しました。
熊本大学文学部地域社会学の徳野貞雄教授による「農村(ムラ)の幸せ、都会(マチ)の幸せ?T型集落点検からみた農山村の再生法?」と題した講演を行いました。
徳野教授は、鋭い問題意識で研究された中身を全力で語られ、県内外から参加した100人を超える学生や農業?農政関係者は、熱心に耳を傾けました。
ムラ社会を考えるにはまず「家族」を考えるべきだという徳野教授は、自身が農産漁村の集落調査をする際行っている、【同居家族とともに、他出子(家を出た子供)の動向を併せて調べ、家系図を書く要領で図形化する「T型集落点検」】という手法が、農山村再生には有効だと熱弁を振るわれました。そして、我が国の現在のムラの危機的背景には、農政や農学が何十年もの間、産地や作物、技術、コスト低減の追求など、「モノ」と「カネ」だけを考えてきて、そこに「ヒト(担い手や消費者)」を考えなかったことを要因の一つとしてあげ、今後、行政は人口減少を前提とした新しい社会モデルをつくらなければならないこと、また、農山村に住む者は、行政の対応を待つばかりではなく、展望性はあまりないが地域の現状や閉塞感に嘆くのではなく、自分の地域をどうするか?どういう風に幸せになっていくか?を真剣に考え、「T型集落点検」を行えば、自ずとやるべきことがわかり可能性がひらけると伝え、「農政は自分たちが作るという強い意志をもつこと」「赤の他人には村を託すことは無理なのだから、本気になって他出子の誰を村に帰すか、村一丸となって取り組むしか農山村の担い手問題に未来はない」と提言されました。
徳野教授の気迫に満ちた講演に聴衆は圧倒されつつ真剣に聞き入っていました。