平成27年9月19日(土)?20日(日)、科学技術振興機構主催の次世代科学者育成プログラム(中学生対象)とグローバルサイエンスキャンパス(高校生対象)に参加する全国の受講生が一堂に会し、発表と協議を行う全国受講生研究発表会が、東京で開催されました。
科学イノベーション挑戦講座は、国立研究開発法人科学技術振興機構の次世代科学者育成プログラムメニューB採択事業として3年目の実施になります。
今回は、中学生4人(小田瑞葉さん、白方颯人さん、高橋史恵さん、藤村颯さん)と昨年度まで本事業に在籍していたOG高校生2人(黒星きららさん、大本理恵子さん)が参加しました。
小田さん、白方さん、高橋さん、藤村さんの4人は、19日(土)に日本教育会館で行われた受講生研究発表会で、「酵素を利用した食品づくりの科学」と「発酵の科学」の2件について、研究成果を英語で口頭発表しました。4人を含む多くの受講生が共同研究を進めてきた水あめと甘酒の研究について、10分間という短い時間に詰め込み、かつ英語で発表するのは大変なことでしたが、勉強や運動会の時間をやりくりしながら、大学に通って練習し、無事発表をすることができました。
また、20日(日)は、一橋大学会議室で2件のポスター発表を行い、10分間で研究について発表し、審査員である大学の先生方からの様々な質問に答えました。「良く考察されている」というお褒めの言葉もいただき、受講生のがんばりが評価されました。発表したポスターの内容は以下のとおりです。
ポスター発表1「発酵の科学」 発表者:白方颯人(三津浜中学校)、小田端葉(愛大附属中学校)
「発酵の科学」は、昨年度進めてきた甘酒の研究を発展させたものです。昨年度は甘酒の製造において、麹を用いてさまざまなデンプン(うるち米、サトイモ、ジャガイモ、小麦粉、サツマイモなど)の糖度と味の変化を調べました。麹とは、蒸し米にニホンコウジカビを生やしたものです。ニホンコウジカビは、デンプン分解酵素やタンパク質分解酵素などさまざまな酵素をもつ真核生物であり、味噌や醤油、清酒など日本の伝統的な発酵食品を造り出すために使われます。
本研究では、このニホンコウジカビのもつデンプン分解酵素(アミラーゼとマルターゼ)に注目しました。生物であるニホンコウジカビと酵素(アミラーゼとマルターゼ)の反応を比較して、生物発酵と酵素反応の反応速度の違いや生成する甘酒のおいしさの違いについて研究しました。その結果、生物発酵より酵素発酵の方が速いこと、また酵素反応の中でもアミラーゼとマルターゼの両方を用いる場合がもっとも速いことを明らかにしました。製造した甘酒については、12?35人を対象に試飲を行い、7項目の官能評価を行って、おいしさについて検討しています。今後はよりおいしい甘酒について研究を続けていきます。
ポスター発表2「酵素を利用した食品造りの科学」 発表者:高橋史恵(愛大附属中学校)、藤村 楓(松山西中等教育学校)
「酵素を利用した食品づくりの科学」では、昨年度進めてきた甘酒の水分を飛ばして、おいしい水あめを製造することを目的としました。甘酒の研究は、1回の反応に300分かかり、多くの実験を行うことが困難です。これは、デンプンが固体状態であり、固体と液体の界面でデンプンの分解反応が進行しているためだと推測されます。 そこで、デンプンを液化することで反応速度を上昇させて、短時間で反応が完結する食品として水あめに注目しました。デンプンの液化は、糊化とよばれる方法で、デンプンを水溶液中に入れて加熱することで行います。この粘性の高い水溶液に酵素もしくは麹を入れて、反応速度とおいしさについて研究しました。
その結果、反応温度が甘酒より20℃低い40℃で、反応速度を6倍にすることに成功しました。また、甘酒と同様にアミラーゼとマルターゼを両方入れた場合にもっとも反応速度が速いこと、ニホンコウジカビがもっとも反応速度が遅いことが明らかになりました。米粉、もち粉、片栗粉、はったい粉、はだか麦と片栗粉など、さまざまな条件で、酵素反応や生物発酵を行い、水あめを製造しました。そして、12?35人を対象にした官能評価の結果、デンプンは片栗粉、条件はアミラーゼ1%濃度、40℃、60分がもっともおいしいという結果を得ました。なぜ穀類デンプンと根茎デンプンでは、根茎デンプンの評価が高いかなどについて今後も研究を続けていきます。