概要
ヒスイ(翡翠)は通常緑色の宝石の一種であり、ヒスイ輝石(jadeite)と呼ばれる鉱物の数ミクロン~数十ミクロン程度の結晶の集合体です。ヒスイは国内で産する代表的な美しい鉱物であることなどの理由により、日本鉱物科学会により2016年11月に日本の「国石」として選定されました。
日本鉱物科学会 “「ひすい」を我が国の「国石」として選定”
ヒスイは多結晶鉱物であるため結晶界面での光の散乱などにより、透光性はあまりよくなく、通常は不透明~半透明です。しかし、ヒスイを構成する鉱物の粒径を可視光の波長(約400-800ナノメートル)より十分小さくすることにより、高い透光性を有する「透明ヒスイ」が得られると予想されていました。
地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)では、超高圧下での物質合成法を駆使することにより、これまでにナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)や、透明で硬いナノ多結晶ガーネットの合成を世界に先駆けて発表してきましたが、このたび同様の手法を用いて粒径200-300ナノメートルの多結晶体からなる透明ヒスイの合成に成功しました。ヒスイは高い耐摩耗性を持つことが知られており、今後更に粒径を100ナノメートル以下のナノ領域に減少させるとともに、微細組織の制御を行うことにより、新たな高硬度?耐摩耗性材料として発展する可能性もあります。
なお本研究の成果は、日本鉱物科学会が発行する英文誌「Journal of Mineralogical and Petrological Science」において、9月30日にオンライン出版されました。